話題の歌集・歌書をピックアップし、ネットのみなさんに著者コメントをお届けするコーナーです。今回は、第一歌集『鳥の跡、洞の音』を上梓された 歌人 牛隆佑さんにコメントをいただきました。
ネットのみなさんへ:著者コメント
― 第一歌集、おめでとうございます。この歌集の中で特に印象に残っている短歌はどれでしょう?
その時の友人だったかのように昔の犯罪者を語りあう
ほとんどは既作の短歌ですが、大枠が定まってから新たに作った歌もいくつかあり、そのうちの一首です。いわゆる良い歌とは違いますが、歌集の留め具のような歌になっていると思います。
― ほとんど既作の短歌、とのことですが、それらはどこで発表してこられたものなのでしょうか
短歌のZINE「うたつかい」や『短歌男子』から直近ではネットプリント「夕星パフェ」など、一貫して無所属のため、定期的に発表する場を持たず、色んな「場」を借りてきました。ありがたいことです。
― この歌集のタイトルの由来について教えてください
仮タイトルは「ラストクロップ」でした。競馬の用語で種牡馬の最終世代のことを言います。短歌誌「短歌ヴァーサス」の終刊後に「短歌ヴァーサス」に衝撃を受けて短歌をはじめた自分は「短歌ヴァーサス」のラストクロップと言えます。そのままタイトルにするのはさすがにアレなので、その思いを入れ込んだ短歌を作り、そこから歌集のタイトルにしました。
― 歌集のデザインも素敵です
素晴らしいですよね。装画や組版など、ブックデザインのすべては「犬と街灯」店主の谷脇栗太さんにお願いしました。装画案では別に、黄色の差し色が入ったバージョンのものがありました。第一印象では、差し色バージョンの方が良さそうにも思えましたが、10年後に10年前の歌集として見た時に、現在のものの方が、良い得体の知れなさがあるなと思い、谷脇さんと相談して現在のバージョンを選びました。歌集は、細くとも狭くとも長く読まれるべき本です。ぜひ、10年後に見返してみてください。今よりもさらに味わいのある装画になっているはずです。
― 作品をつくるにあたり他の歌人または異なるジャンルから受けた影響は
無数にあります。最初は瀧音幸司、最近では多賀盛剛。歌人以外では、八上桐子の川柳や、升田学とエメスズキの漂流詩からの影響は自覚しています。
― 最後に今後目指す方向についてひとこと
未だ歌人にとって、歌集を出すことの意味がとても大きく、歌集刊行以後は歌集単位で評価が更新されることがあると思います。あまり、意識をせず、影響もされず、歌集ももろもろの活動のうちのひとつとして捉えたいです。
― ありがとうございました
■著者プロフィール
牛隆佑(うしりゅうすけ) @ushiryu31
1981年、大阪府生。2009年から短歌をはじめる。結社・同人誌所属なし。八上桐子(川柳)、櫻井周太(詩)との3ピースユニット「フクロウ会議」メンバー。これまでの活動には、「空き家歌会」「大阪短歌チョップ」「葉ねのかべ」など。近年は、木下こう『体温と雨』の私家版での再版や、「犬と街灯」での私家版歌集についての活動を行う。
■書籍情報
書名:『鳥の跡、洞の音』
著者:牛隆佑
第一歌集、364首
組版・装丁:谷脇栗太
栞文:八上桐子、門脇篤史、西尾勝彦
価格:900円(税別)
発行:2023年9月10日
サイズ:四六版、150頁
購入リンク:[本書の購入はこちらからお願いいたします]
※自家通販はしていませんので、リンク先の各書店でお求めください。