話題の歌集・歌書をピックアップし、ネットのみなさんに著者コメントをお届けするミニコーナーです。今回は、第一歌集を上梓されたばかりの 歌人 木村八朔 さんにコメントをいただきました。
掲載作品抜粋4首
春、夏を一回多く生きているあなたの頬の陽のたまるとこ 自分では買わないような海風をくれて何にしようか みかえり 稚拙でも愛を綴っていいですか正解のないとめ、はね、はらい PayPayと鳴るまで確かめて夏夜 お礼って風鈴みたいだね
ネットのみなさんへ:著者コメント
― 第一歌集の出版、おめでとうございます。今回の歌集はどのような書籍をめざしてつくられたのでしょうか?
夜、気持ちが沈んだ時、寝る前にベットで溶けながら読めるような本です。
人のことが好きな人が作る、どんな気持ちの時にも寄り添いたいあたたかな短歌が収録されています。
― この歌集で挑戦した点があれば教えてください
うまく落ちをつけるというよりは、少し余白を持たせたやわらかな短歌を詠んでみました。
― この歌集の中でもっとも印象に残っている短歌を教えてください
春、夏を一回多く生きているあなたの頬の陽の溜まるとこ/木村八朔
歌人の岡野大嗣さんが褒めてくださった短歌です。三十一字で情景とバックグラウンドがこんなにも表現できたことはなかったですし、歌集の雰囲気に一番合致していると思っています。
― 他の歌人から受けた影響ってありますか?
元々は歌人の伊藤紺さんの本を下北沢の書店「SPBS」さんにて購入して読んだところから僕の歌人人生はスタートしました。
夜、寝る前にベットで音楽をかけずに読むと、どんな気持ちのときも寄り添ってくれて、こんな人になりたいなとなったのを覚えてます。
今回SPBSさんから出版したんですが、すごく縁を感じましたね。
― 今回の歌集づくり、歌づくりの過程で特に印象に残っているエピソードがあればきかせてください
オチのついた上手い短歌は上手い以上にはならないんだよ、と岡野大嗣さんや左右社の筒井菜央さんからアドバイスをいただきました。
今までの短歌を少し推敲して変えたり、ということにチャレンジしたら、自分の読む短歌にも派生されて少し世界が違って見えました!
― 歌集のタイトルの由来は?
一人だと余裕があって二人だと距離が近い、そこに溶ける瞬間が好きで、その空間を歌集に閉じ込めたくて名付けました。
― ブックデザインについてひとこと
ブックデザイナーの名久井直子さんが色を選んで下さりました。
温かさを感じる、と言ってくれて、その瞬間僕の短歌が黄色に光るようになった気がして。
名久井直子さんのデザインで第一歌集を出せて本当に幸せです!
― ありがとうございました!
著者プロフィール
木村八朔(きむら・はっさく)
1996年8月13日、東京都生まれ。歌人。2022年より短歌を始める。2023年、文芸専用投稿・閲覧プラットフォーム「ブンサイ!」をリリース。ペンネームである八朔の由来はドラマ『最高の離婚』の猫から。@hassaku1996
書籍情報
書名:『セミダブル・メルト』
著者第一歌集
著者:木村八朔
短歌収録数:約50首
組版・装丁:名久井直子
価格:1000円(税別)
発行:2023年9月25日
発行元:SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS,LLC
書籍仕様:文庫サイズ、中ミシン綴じ製本、36ページ
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