毎月短歌(AI歌壇)第1回入賞者まとめです。
■選者:谷じゃこさん
自由詠
特選
いつかまた会えるといいね 目の中の自動トビラがやさしくしまる/虚光
特選
葉も影も増す遊歩道初めての子に付ける名の候補は三つ/梅鶏
テーマ詠「針」
特選
検針日になると私の毎月の涙の量をはかる妖精/宇井モナミ
選評
■選者:ぽっぷこーんじぇるさん
自由詠
特選
折り紙を教えてくれた祖母の手の形を探す火葬場の午後/あおいそうか
入選
存在をふと思い出してほしいから空が好きだと伝えました/楠木かな
葉つぱと言ふときの訛りのたびきみの見たことのない故郷を思ふ/高田月光
「夜ごはん、リクエストある?」「そうだなぁ。しいて言うならふつうがいいな」/早乙女さぽ
くり返し熱中症を叫びゐるテレビも熱を持ちたまふなり/つるじい
永遠はここにあるって信じてた同じ天井臨む背泳ぎ/くぼたむすぶ
警報が出ると日本のそこここにwinnie the poohが現れている/ef
熱に喘ぐ子に添いながらこれからは楽しいことがいっぱいあるよ/アカマツヒトコト
何杯も水を飲んでも濾過されてわたしに水はたまらぬのです/虚光
見切り品をしずかに乗せて方舟のようにフロアに並んだカート/梅鶏
剣山の上にさされた生け花の代わりになりたくないと思った/松本桃英
針と糸を市場で買って火曜からコサックダンスを踊りつづける/寿司村マイク
選評
■選者:八幡氷雨
自由詠
好きな短歌
折り紙を教えてくれた祖母の手の形を探す火葬場の午後/あおいそうか
最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る/ZENMI
カバになる夢を見たあんまり今と変わらない生活をしていた/ZENMI
四十億年《しじゅうおくねん》の流れの今日もまたフルーツグラノーラ流れ込む/とらうと
わたあめとあだ名を賜りました佐藤ですなるべくふわふわする所存であります/畳川鷺々
あめんぼがみづすべるやうはじめてのはだはじめてのくちびるそして/白糸雅樹
ねこねむるとけるからまるるるるるる春る、るる春あくびをしたる/秋月祐一
病院は満員であり全席が優先席のような待合/ef
指先で波紋をつくって傷つけたメダカの数が試験に出ます/虚光
鮮やかなひまわり畑を泳ぐときひかりをまとう魚《うお》となる子ら/碧乃そら
テーマ詠「針」
好きな短歌
秒針は刃でもあり夕焼けへ診療所の影ながく伸びゆく/石村まい
妹のピアノひそかに売られゆく午後軋みつつ秒針すすむ/デコピン
検針日になると私の毎月の涙の量をはかる妖精/宇井モナミ
針付きの時計を毎度買い求め実入り少なき日雇いバイト/とんだ一杯食わせ者
白猫の被毛のやうな針をもつさぼてんだからキスしてしまふ/高田月光
秒針を追い越せぬまま凡百の選手の夏がさきほど終わる/ef
今も好き 針というより棘なのでピアスホールの調子が悪い/小石岡なつ海
肺胞に幽かな針と分け入ってきみのことばを分かってみたい/ef
選評
■選者:からすまぁ
自由詠
特選
妙音 星を眺め過ぎた彼女は正二十面体の展開図/音羽
次席
境目に凝る自己愛しゃりしゃりを混ぜて飲み込むクリームソーダ/ぐりこ
気になるで賞
みんな死ぬ死ぬがせいぜいとりどりの死まで生きよと願う教室/ef
最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る/ZENMI
永遠はここにあるって信じてた同じ天井臨む背泳ぎ/くぼたむすぶ
私には置いていけない人がいる むらさき残る皿を洗って/虚光
夕焼けがからだをめぐる あのひとに触れていいなら影になりたい/高田月光
はるのひる練乳なめてゐる童女そらは魔物が出さうな青さ/秋月祐一
気づいたら海はそこまでやってきて蝉は明日がはじまりみたい/淡島けのび
いつまでもおたまじゃくしのままでいる夏をあなたと泳ぎ切りたい/碧乃そら
テーマ詠「針」
特選
手を挙げて無言の同意を否定する君は誰かの避雷針だよ/猫背の犬
次席
秒針は刃でもあり夕焼けへ診療所の影ながく伸びゆく/石村まい
気になるで賞
密やかに結晶はのび不可算のきらめく針をはらむ晶洞/ef
しんしんと針葉樹林は短長の葉を傾けて時間を刻む/アカマツヒトコ
慎重にあなたを愛す 針の穴に糸を通す片目のように/ながしまけんた
白猫の被毛のやうな針をもつさぼてんだからキスしてしまふ/高田月光
秒針の反動とともに進みゆきあの日きみがした腹筋を想う/畳川鷺々
選評
■選者:斎藤君
自由詠
大胸筋賞(一席)
アンドロメダ銀河の体積を求めて あかく有る公園のヘビイチゴ/みがかそま
広背筋賞(次席)
見切り品をしずかに乗せて方舟のようにフロアに並んだカート/梅鶏
脊柱起立筋賞(三席)
あめんぼがみづすべるやうはじめてのはだはじめてのくちびるそして/白糸雅樹
各賞
上腕二頭筋賞 最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る/ZENMI
上腕三頭筋賞 くり返し熱中症を叫びゐるテレビも熱を持ちたまふなり/つるじい
三角筋(前部)賞 すばらしい世界がほしい楽器屋でハットシンバルばかりを見ている/とらうと
外腹斜筋賞 さびしさが泊まったことの証明にジェンガブロック一つ引き抜く/虚光
僧帽筋賞 身軽さが眩しく見える旅先でパンツを捨ててしまへるひとの/高田月光
前脛骨筋賞 屋上の空気はきれい雲の間を対象のない祈りが泳ぐ/畳川鷺々
大円筋賞 悔しさは指のさきから浸食し家に着くころ心に届く/森柚子
棘下筋賞 一日を凝縮したら二行分、馬鹿な話があってよかった/早乙女さぽ
眼輪筋賞 彼の人の薄毛進むに気づくとも為すすべもなく話し続けた/藤本くま
テーマ詠「針」
普通の人々賞(一席)
押しピンを刺されたままで色彩を徐々に失う卒業写真/奥かすみ
某国より愛をこめて賞(次席)
針と糸を市場で買って火曜からコサックダンスを踊りつづける/寿司村マイク
バニシングポイント賞(三席)
下糸を拾うミシンの針に似た口づけ前の瞼の速度/小石岡なつ海
各賞
断絶賞 秒針を追い越せぬまま凡百の選手の夏がさきほど終わる/ef
第三の男賞 出欠を取るたび君が飛ばされることに慣れてくボク達の罪/あおいそうか
善き人のための何か賞 レコードに針を落として聴くように君は世界に優しく触れる/インアン
何かの黙示録賞 検針日になると私の毎月の涙の量をはかる妖精/宇井モナミ
デス・プルーフミシン賞 勢いをつけたミシンで何本も折っては死ぬ気の恋をしていた/御影
何かの帝王賞 ギラギラが噴きだしそうでおそろしい竹内力に針を刺したら/鹿ヶ谷街庵
ヤコブの梯子賞 秒針は刃でもあり夕焼けへ診療所の影ながく伸びゆく/石村まい
モノリス賞 針先をライターで焼く母は今類人猿のような猫背で/梅鶏
選評
■選者:北町南風
自由詠
北町賞 手があつてよかつたこれを振つとけばさやうならつて言はないで済む/高田月光
南風賞 聞かせてよタオルケットを夏掛けと呼ぶあなたにある夏の季語たち/宇井モナミ
金賞 最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る/ZENMI
銀賞 君たちはどう生きるかと問われてるシャンプーとリンスが同時に減らない/藤本くま
銅賞 一日を凝縮したら二行分、馬鹿な話があってよかった/早乙女さぽ
テーマ詠「針」
北町賞 あぁ声は針だったのか容赦ない悪意が刺さるコールセンター/猫背の犬
南風賞 失恋の話は餌にならないか海に落とした針を見つめて/梅鶏
金賞 レコードに針を落として聴くように君は世界に優しく触れる/インアン
銀賞 その針は深くて抜けない遠き春 いつしかわたしの一部となって/ほたる2
銅賞 肺胞に幽かな針と分け入ってきみのことばを分かってみたい/ef
選評
■選者:AI選者
自由詠
特選
鮮やかなひまわり畑を泳ぐときひかりをまとう魚《うお》となる子ら/碧乃そら
テーマ詠「針」
特選
針に糸とおす時間の愛おしさ 祖母と過ごした長い冬の日/ほたる2