第9期ココタン卒業制作
[この記事はココタンをサポートしてくれている 歌人はゆき咲くらさん が編集してくれました]
ココタン卒業生の短歌作品発表です
ここだけ短歌(愛称、ココタン)シーズン9の皆さんが卒業となりました。ココタン卒業生による素敵な作品を発表させていただきます。
第二回のココタン卒業制作は、1月8日から2月29日までココタンに参加し、クラスの短歌リレーを中心に未発表作品つくりに取り組んできた皆さんの短歌です。
様々なところへご応募される作品作りという観点から、「発表してもいいよ!」とお知らせくださった皆さんが詠まれた作品1首と、一緒のクラスで印象に残った歌人さんを教えていただきました!
短歌リレーで詠まれた作品
ココタンでは、そのクラスごとに「短歌リレー」をやっています。いちごつみよりさらにゆったりしたルールで詠みついできた短歌となります(発表してもいいよ!のみご紹介)。
シーズン9は、「孫悟空」「沙悟浄」「猪八戒」の3つのクラスにわかれ短歌を作っていました。それではさっそく作品をご紹介させていただきます。
[敬称略、順番はクラスごとランダムです]
孫悟空、沙悟浄、猪八戒の各クラスで詠まれた作品たち
銀色の鱗は剥がれキッチンをばらばらに飛びゆくざらめ雪/若夏
溶けていくアイスクリームの船に乗り今度こそはしあわせになろうね/ナクキザシ
柔らかな毛布のような牢獄に看守はいないただ夜が来る/睡密堂
今はまだ冬芽だとして名ばかりの春を待ってる地中のわれら/綿鍋和智子
きみの香が残る褥を繭としてつめたき瑠璃の夜にただよへば/碧乃そら
張りつめたオムレツおんざライスもうナイフで開いてほしい 恋です/奈瑠太
大雪は笑顔と思う真っ黒な世界をすぐに隠してくれる/小倉るい
洗礼の詞みたいに雪が降る 人魚にだって魂がある/案山子
傍らで寝息を立てるふわふわの犬は食べ物みれば獣だ/加藤万結子
ひざ痛い腰が痛いと祖母は言う神の手際で豆を剥きつつ/えびはるまき
屋根からの落雪の音しみじみと遥か遠くに春の足跡/ながしまけんた
薬指はめたリングを投げ捨てて深紅のルージュくっきりとひく/あおいそうか
声がした歩幅が緩み向き合った1億の中一緒は出会う/いふじしょうた
カツカツと強い白杖振る音に混じるかすかな弱音「助けて」/六浦筆の助
放課後の夕焼け染まる教室で一人昼夜の真ん中に居る/藤瀬こうたろー
白シャツにケチャップのしみ付けたまま春は巡ってそれぞれの道/間由美
ビロードの敷き詰められた階段を牧師のように猫がおりゆく/塩本抄
荒れ果てて 見棄てた故郷(ふるさと) あの星の砂に包まれ死んでいきたい/御影
教えてよ、ひたすら歩めばいつの日か交わるのですかキミのミチと/十六夜
繰り返す立体交差の呪いから逃れていつかキミ抱きしめる/白糸雅樹
はつはるの家族四人と一匹の日向ぼっこ地区大会せり/畳川鷺々
画面越し最後の歌に震えつつ潤む瞳の君にさよなら/藍沢空
きみが破棄した解答用紙チョコレートとろけるように共犯となる/はゆき咲くら
印象に残った歌人さんは?
「クラスで印象に残った歌人さんは何人もいます!」といったご回答がとても多かったので、次回以降はそのあたり調整してのご紹介かもしれませんが、今回は各クラス内で思う存分に直接お伝えいただきまして、「中でもとくに!」という歌人さんを教えていただきました!!
(以下は作品に触れる内容はすべてカットしています)
〇印象に残ったのは、ナクキザシさん
歌のバランスがとっても好きでした。単語の選び方もとても好みでした。言葉選びが、主体との関係の距離感を印象づけていて好きです!
〇印象に残ったのは、奈瑠太さん
どの歌も印象的でした。〇がかかっていて印象的でした。フレーズが本当に好きです。
〇印象に残ったのは、小倉るいさん
歌は他にも印象に残っています。なんて素敵なんだろうと思いました。
〇印象に残ったのは、案山子さん
なんと美しい上の句と下の句の切り替え。胸を打ちました。希望が持てました。思わず〇〇してしまいました。
〇印象に残ったのは、若夏さん
音の連続使いが素敵でした。わくわくする好きな歌でした。
〇印象に残ったのは、えびはるまきさん
言葉の選び方や展開の仕方が実にインパクトがあり、でもさりげない。秀歌が多かったです。リアリティーが素晴らしいと思いました。次にどんな歌を詠むのか毎回ワクワクしてました。
〇印象に残ったのは、あおいそうかさん
実は、自己紹介の歌から心を掴まれていました。日常のなかのハッとする瞬間を掴むのがお上手で、今回はどんな切り口が見られるのだろうと、短歌リレーを楽しみにしていた歌人さんです。
〇印象に残ったのは、畳川鷺々さん
幻想的でファンタジックで美しくも情景がくっきり浮かぶ歌を書かれるところです。また、読んでいると触覚や嗅覚も呼び起こされます。何度も読み返し、噛みしめたい歌たちをありがとうございました。どの歌も刺さりました。あらためて読んでみると、とても特徴的、個性的な短歌が多いのに気づきます。他の短歌ももっと読んでみたいなと思わせる魅力があります。
〇印象に残ったのは、塩本抄さん
安定感がバツグンでしたし印象的な歌が多かったです。何度も何度も読んで味わいたいと感じました。塩本さんのお歌は一首の中にどこか必ず引っかかるところがあって(自分でもそうあろうと作歌しているのですが)、それがすごく自然に詩情を生んでいて上手いなーやられたなーと思うことが多かったです。新聞歌壇やN短などでも活躍されているのも頷けます!好きです!
〇印象に残ったのは、間由美さん
ひとつの言葉を我が事に結びつけ、日常を丁寧に拾いあげて歌にされているのが素敵でした。いろいろな歌を読んでみたくなりました。さり気ない日常の柔らかい雰囲気の中に、毎回胸にグッとくる言葉が入っているところです。
〇印象に残ったのは、白糸雅樹さん
紡がれる歌の世界観や選ばれる言の葉がとても印象深かったです。
〇印象に残ったのは、綿鍋和智子さん
〇〇のように〇〇だと解釈。だからこそ、「〇〇〇」という表現が素敵でした。
〇印象に残ったのは、加藤万結子さん
〇〇と言う発想が素晴らしいと思いました。また、思いを切々と歌われた短歌にこころが揺れました、私も同じような思いをしているので。
〇印象に残ったのは、ユミヨシアユムさん
上句と下句のつながり具合が、ユニークで絶妙だと思いました。〇〇の歌、△△の歌、◇◇の歌、など、とても私には思いつけないなと思うと同時に、そうだよねそうだよねと納得している自分がいました。
まとめ
以上です、皆さんご参加ありがとうございました!
シーズン9のココタンは、元旦に発生した能登半島地震のなかスタート。あらためまして被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。被害に遭われた地域の一日も早い復興を引き続きお祈り申し上げます。そうした地域への様々な思い、季節の行事、節分、バレンタイン、お受験なども、今回の作品には多く見られました。
ここだけ短歌(愛称、ココタン)は非公開の少人数短歌グループを作り新作の壁打ちなどをおこないながら未発表扱いの短歌作品創作をおこなうという企画です。短歌コミュニティ「A短歌会」の中で開催されています。
ココタンでは応募数にあわせ数名の創作グループ(クラスと呼ばれています)をつくっています。グループ内で題詠やいつごつみなど短歌作品を積極的につくる企画が提案され、感想の交換も活発におこなわれています。ここでやりとりされた作品は未発表扱いです。未発表作品ストックをつくっていきたいけど見てもらう人も欲しい、それをネットでやりたい、という方のご参加をお待ちしております。
ココタン第9期卒業生が今後もすばらしい短歌を発表していくことを楽しみにしています(A短歌会サポート一同)
(文・編集・まとめ はゆき咲くら)