A短歌会の中で結成された「映画短歌空間」のメンバーが、それぞれ自宅でもういちどゆっくりみたい推し映画を短歌にしてみました。
もくめ 『罪の声』
はゆき咲くら 『シックス・センス』
瑞野明青 『フィールド・オブ・ドリームス』
御影 『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
深水英一郎 『ブレードランナー2049』
もくめが推す映画はコレ!
映画『罪の声』
映画館で観た当時、涙が止まらなくなってしまい、しばらく動けなかった映画です。改めて観てみたら自分はどうなるかなぁと思って選んでみました。
35年前の劇場型犯罪の真相を追う二人の男が、人に会って会って会いまくって話を聞いていくお話です。終盤の曽根俊也という人物の「伝言」が突き刺さって当時は大号泣したのですが、今回はそこでその台詞が来ることは分かっていたので、冷静に受け止めることができました(うるっとはきました!)。
扱われている「ギンマン事件」は、「誰も死者が出なかった事件」「犯人は何も得られなかった事件」と言われている事件です。果たしてそんな事件はあり得るのか。本当に犠牲者はいなかったのか。ぜひ観て頂いて、真相を受け止めて欲しいです。
目の前のあなたとまるで違うから罪の意識を感じてしまう/もくめ
もくめ>2020年11月から短歌を始めました。ヨミアウとA短歌会に参加しています。Xのスペースで朗読をしたり、noteに歌集の感想を書いたりしています。趣味は読書です。
はゆき咲くらが推す映画はコレ!
映画『シックス・センス』
「この映画にはある秘密があります。まだ映画を見ていない人には、決して話さないで下さい」当時の前置きです(懐カシ)。なので今回の短歌は映画のネタバレなし。にしても、、、当時も恐かったけど、久々に観たら、やっぱり恐かった(笑)。 ”シックスセンス”とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を超えたもの。幽霊が視える少年のお話ですが、本当の恐さは別のところで(…書けない)。目の前と、どう向きあってゆくのかを描いた深いい作品です♡
このせかいうそそのものときみがいうならみえてくるみえないものも/はゆき咲くら
はゆき咲くら>占いとスピリチュアル。仕事も趣味もそれだけだったある日、ふと目にした短歌に恋をする。短歌に心奪われて以来、祈り、花を愛でる、一日一短歌。A短歌会に参加しています。
瑞野明青が推す映画はコレ!
映画『フィールド・オブ・ドリームス』
謎の声に導かれてトウモロコシ畑に野球場を作るが、現実は厳しかった。それでも夢の力と家族の思いは主人公の父親への願いを叶えることになる。とにかく最後の父親と主人公のキャッチボールに感動します。
声によりここに野球場作りては集いしヒーロープレーの驚き/瑞野明青
夢叶う場所ならここも天国と父と交わしたキャッチボール/同
瑞野明青>好奇心のおもむくまま、色々なことに手を出します。サッカー観戦で日本中だけでなく海外も。歴史好きなので聖地巡礼も。その色々なことを短歌や文章にしたためます。@inonagapenchan
御影が推す映画はコレ!
映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
舞台は19世紀ロシア。北極点への航海中に消息を絶った船、ダバイ号とその船長である祖父の行方を突き止めようと奮闘する孫娘・サーシャの冒険譚である。
とにかくほとんどのシーンに映る雪・氷・また雪。切り絵のようなシンプルな輪郭線とクレパス調の色彩はシンプルであるが感覚に響き、画面越しでも身震いしてしまう。その一方、日差しによるきらめき、どんよりを徐々に払うまぶしい冬の夜明け、澄んだ青空を飛び交うカモメ、白くつややかな流氷…冷たさゆえに際立つ冬の景色をふんだんに楽しめる。
そして、そんな中で展開されるストーリーには雪と氷の凄まじさ、怖さと目的を遂げようと立ち向かう人間の逞しさが痛いほど強く描かれている。
新春、とは言え気候は春まだ遠いお正月に、冬に満たされたこのアニメ映画を観ていただきたい。そして、ラストまで大海の上の船のように心が揺さぶられるので、エンドロールの先まで是非見届けていただきたい。
吹きすさぶ風と雪とを頬に浴び 少女の瞳と涙は熱く/御影
寒風の中を飛びゆく鳥を見る同じ行き先の甲板の上/同
何もかも失えど焦がれる北の果て 理由(わけ)は氷河と空のみぞ知る/同
御影(みかげ)> 愛や死などをテーマにした短歌・細かな模様のペン画イラストを創作し、Xで発表しています。A短歌会参加中。
深水英一郎が推す映画はコレ!
映画『ブレードランナー2049』
ブレードランナー2049をはじめてみたのは試写だったのですが、正直、ものすごくがっかりしました。わたしからしたら突拍子もないことが作中で起きていて、その時は話についていけなかったんです。
ただ、その後折りに触れ繰り返しこの映画をみているうちに、最初に引っかかってたことなんてどうでもよくなって、この作品の中で語られる「偽物の記憶」を考えるようになりました。
前作のブレードランナーもそうだったんですが、レプリカントはコピーされた嘘の記憶を植え付けられています。本人は、それは自分だけのオリジナルの記憶だと思いこんでいるわけです。ですがそれは他人のコピーにすぎなかった。
この映画を繰り返しみるたびに、もし自分がそうだったらどんな気持ちなんだということを考えてしまいます。だがよくわからないんです。よくわからないですし、それが果たして重要なことなのかもわからなくなってきます。
人間の身体って繁殖によってつくられたコピーですからそこに自分自身がいてオリジナリティを保っているという感覚は、実はそう思い込んでいるというだけの幻想のようなものなんじゃないだろうか。現在ライブで生存している八十億の人間の数だけ自分自身がある、なんてことほんとうにありうるんだろうか。なんてなことを繰り返し、繰り返し考えては、よくわからないまま見終わって、またほったらかしにしています。
よくわからないから繰り返し見てしまう。そんな映画が好きなんですが、この映画はそんな映画の代表みたいなものです。
よそわれてわたしの椀の吸い物にたまたま浮かぶ一片の肉/深水英一郎
深水英一郎(ふかみえいいちろう)> 毎日短歌のお題を出しています。短歌投稿サイト『コトバディア』管理人。短歌Webニュース『短歌マガジン』を運営しています。
映画+短歌のご紹介は以上です。この記事を読んで気になった映画があればぜひぜひ鑑賞してみてください!
(映画短歌会)
■「映画短歌空間」について
映画短歌空間は、「A短歌会」の映画好きメンバーでおこなっている活動です。映画の試写に参加して新作映画をいちはやく短歌にして紹介したり、過去の名作を短歌+散文で表現したりしています。興味ある方はA短歌会にご参加ください。配給さん、代理店さんなど、映画・映像作品を短歌で紹介してもいいよ、という方からのご連絡をお待ちしております。(メールで tankazine@gmail.com までご連絡ください)