toron*さんの「投稿のコツ」勉強会いよいよスタート
■toron*さんの短歌の作り方クラス はじまります
昨年2023年、うたの日の薔薇王となったtoron*さんが投稿サイトや新聞歌壇、雑誌、テレビなどへの投稿のコツについて伝授する3ヶ月間の勉強会を開催します。
勉強会のスタートは、2024年1月21日。ここに掲載したQ&Aは、その勉強会に向けて開催されたお悩み相談質問会のやりとりの中から抜粋したものです。(質問者の筆名は伏せてあります)
短歌の作り方に関するお悩み相談は、A短歌会のオンラインコミュニティの中のチャットでおこなわれました。この相談会は、初心者限定ではなく、どなたでも質問できる形で開催しました。
それでは早速、この相談会でのQ&Aをご紹介していきます。
■A短歌会:toron*さんへのチャットお悩み相談・質問会、要約
A短歌会のオンラインチャットで歌人toron*さんへのお悩み相談・質問会を開催、その様子を編集してお届けします。
Q:短歌の創作ペースについて
毎日何首くらい作っていますか? まだそれらをどこに投稿していましたか?
A:toron*さんの回答
自分は割と多作な方だったので、月に100~120首くらいつくっていました。その9割は投稿に使っていましたね…創作ペースは日割りだとかなりばらつきがあります。〆切前に10首くらい慌ててつくったりもしていたので…。
ピーク時はうたの日、うたらば、NHK短歌、角川歌壇、野性歌壇、短歌の時間、短歌くださいに投稿していました。いちばん力を入れていたのは相性が良かった野性歌壇です。
ただ、歌集を出す一年前くらいには自分なりに絞って送っていました。理由としては、月に100~120首くらいつくれたとしても、それを送ったか送ってないかの管理の方が難しくなってきたからです。あとは、投稿先の短歌投稿企画の終了(野性歌壇、短歌の時間)もありました。また、毎月テキストを買う必要が出てくる投稿先(NHK短歌、角川歌壇)も見直しました。
そのあたりから新聞歌壇がメインの投稿にシフトして、歌集を出した現在はそこからさらに絞って、うたの日以外だと読売歌壇に月1首くらいです。
Q:投稿先の選び方
投稿先の選び方を知りたいです。採用されやすい、相性の良さみたいなものがあると思うのですが、どんなふうに判断していますか?
A:toron*さんの回答
「相性の良さ」「その選者(の歌)が好きか」以外には「その選者が採った歌が自分も感動できるか」が判断基準にありました。相性の良さはひとまず半年くらい送ってみて、その間に他の投稿者の歌を読んで、自分がその「流れ」の中に入れそうかを判断します。半年くらい経っても採用されなければ、メインの投稿先からは外しました。ただ、完全に外さずに、その「流れ」に入れそうな歌が詠めたときにだけ送るようにしました。
採用のされやすさ以外の基準としては、モチベーションを上げられる賞品が頂けるかや、結果がわかる日がメインの投稿先と偏らないようにして、その月の楽しみが増やせるような投稿先を選びました。
…この内容は勉強会でかなり具体的にやろうと思っています。
Q:短歌発想法
短歌に結びつけられる発想はどこから出てくるのでしょうか?
A:toron*さんの回答
好きな単語を「Lifebear」というスマホとPCどちらでも使えるメモに書き留めていて、それを眺めてつくります。日々の出来事がトリガーになることはあまりないですね…言葉と言葉同士を二物衝突させて、景をつくりだすという感じです。
Q:参考にしているもの
短歌を詠む時に参考にしている歌集や本はなんでしょうか?
A:toron*さんの回答
参考にしている歌集はあまりないですね…うたの日で好きな歌人の歌をサイトで読んで、感覚を取り戻すことは今も良くしています。
ただ短歌をはじめてずいぶん後ではありますが木下龍也氏の『天才による凡人のための短歌教室』は頷けることが多くて、読み返すことがあります。
Q:大切にしていること
歌を作る時、いちばん大切にしていることはなんですか?
A:toron*さんの回答
自分の歌に自己愛を持ちすぎないようにしています。
Q:自分の強みの分析
toron*さんから見て、ご自身の短歌の強みってどういうところだと思われますか?
A:toron*さんの回答
「比喩」や「歌にするシーンの切り取り方」を挙げて頂くことが多いのですが、正直自分ではあまり実感がないですね…自分のなかの監督目線がまだ存在しないというか、「強み」は読み手に見つけてもらうような気もします。
短歌自体ではないですが、自分の強みは穏やかにコツコツやり続ける熱量を持続していることかもです。
Q:比喩について
toron*さんの短歌は、比喩がとてもステキです。三十一文字の世界がぐーっと広がるのです。それはとてもかけ離れているのですが、一気にまとまり、目の前にその景が鮮やかに写ります。
とてもじゃないけど、真似出来ないのですけど、AをBに例えて結びつける、その発想はどこから生まれているのでしょうか?
A:toron*さんの回答
好きな言葉を書きつけたメモ帳を持っていて、消したり継ぎ足したりを繰り返して、常に200~300くらいの単語をストックしています。割と言葉自体が持つイメージを利用して発想しているかもしれません。
言葉同士の二物衝突や、対象(モノ)への共通認識に意外性を加える(共感+発見or驚き)ようにつくっています。実はほとんど現実の景色がトリガーになっていないことも、関係があるかもしれません。
Q:短歌を作るテンションを保つ方法
自分は感情の起伏や考え事が多いとすぐに調子を崩してしまって、なかなか短歌のテンションが保てないのですが、toron*さんにもそういう時ってあったりしますか?
そういう時に調子を戻すためのコツってあったりしますか?
あと、短歌の作り方は人により色々とは思うのですが、短歌を作る面白みってtoron*さんの中ではどんなところにありますか?
(自分の感じたことを読みたいとか、短歌という作品を作ること自体が楽しいとか)
A:toron*さんの回答
随時短歌をつくるテンションにするの難しいですよね…。
心が乱れたりする原因って、そのつど違うものではあるのですが、自分はSNSやニュース(主にネット)になるべく触れないようにします。ネットだと誰かの怒りや悲しみがより剥きだしなので、弱ってる身に割とこたえるので…幸せなニュースであれ、今の自分と比較してしまって、自分は何をやっているんだ…となってしまうようにも思います。
あとは、日常の動作をていねいにします。靴をきっちり揃えたり、ドアを音のしないように閉めたり、宅急便を届けてくれた人にちゃんとお礼を言ったり…「短歌を離れる」とは少し違って、現実の生活の方に比重を傾ける感じです。
それ以外だと、短い日記をつけています。あまり長いと続けれらないし、内省的になりがちなので。きょう何を食べたかだけでも書きつけると心が整うし、読み返すと発見も多いし、短歌の種も多い気がします。
短歌を作る面白みですが、自分は割と少数派だとは思うのですが、言葉フェチな部分があって、好きな単語をノートに収集しているんですよね…その好きな単語が短歌のなかで、自分急にストーリーをもって立ち上がってくるのが面白いです。自分の意図してなかった景が出てくることも面白く感じるかもです。
Q:自分の歌に自己愛を持ちすぎないようにしている理由
「歌を作るとき、一番大切にしていることは?」の質問で、toronさんは「自分の歌に自己愛を持ちすぎないようにしています」と回答されています。
それに正直とても驚きました。
ご自身の作品には自ずと愛着が生まれてしまうと思うのですが、なぜそのようにされているのか?教えていただければと思います。
A:toron*さんの回答
ひとつの歌に対して自己愛を持ちすぎると、歌をたくさんつくることへの足かせになってしまうのですよね。自分が良いと思った歌が評価されなかったらずっと引きずってしまったり、その焼き直しの歌をつくり続けることになってしまうので…。あとは好きすぎると、判断というか読みの物差しがくるうようにも思います。これはひいては他の歌人の歌と比べて、この歌より自分の歌の方がずっといいのに、というような悪い循環にはまってしまう気がしています。
自分の歌を好きなことは好きなままで良いので、好きな歌は自分以外の歌でたくさん見つければいいかな、と思っています。
Q:「現実の景色がトリガーになっていない」件について
回答の中で「ほとんど現実の景色がトリガーになっていない」と仰っていました。短歌を詠まれた最初からそうだったのでしょうか?
もしくは、いろいろ試した結果そういったスタイルになったということでしょうか?
A:toron*さんの回答
「ほとんど現実の景色がトリガーになっていない」ということですが、わたしは短歌と出会ったとき、現実がすごくしんどかったんですよね…今思うと、そこでありのままを詠んでそのしんどさを表現として昇華させる、ってこともできたのかもですが、それを見つめ直す気力がもうなかったのです…なので、歌のなかの自分をパラレルワールドのようにするつくり方を、割と最初からしています。
Q:読みたい景を読み手に伝える方法
詠みたい景について、読者に伝わりやすくするための推敲などの方法が知りたいです。
現代短歌ではさまざまな飛躍や比喩の表現が使われるように思いますが(そして自分もそういうものが好きですが)、それがちゃんと伝わり採用される場合と、そうでない場合とで何が違うのか、いまいち掴めていない気がしています。
また、景に思い入れが強くなると伝わりづらくなる現象について、経験上「こうするとうまくいった」ということがあればご教授いただきたいと思います🙏
A:toron*さんの回答
「詠みたい景について、読者に伝わりやすくするための推敲」ですが、いくつかやり方はあります。詳しくは勉強会の方でしっかりお答えしようかと思うので、ざっくりで失礼します。
「比喩・飛躍」の表現はわたしも好きです。「思い入れが強くなると伝わりづらくなる現象」とおそらくかぶる部分があるので、まとめてお答えします。
おそらく選者に「すべて」伝わってほしいと思って、歌にいろいろ乗せすぎてしまっているのでは、と推測します。一首に自分の感情、情報量、それを伝えるための形容詞、などです。
評などを読むとプロの選者は「すべて」解ってくれているようにも思いますが、実際はそんなことはありません。その歌の核の部分を読み取ってくれているので、作り手の思惑とそれほど誤差のない読みになっているということかと思います。
なので作る側も、まずいちばん伝えたいことを設定して、その他は伝わったらラッキーくらいの引き算でつくるのが上手くいくように感じています。
また、補足すると「比喩・飛躍」は選者も好みがあるので(例えば朝日歌壇の選者の方々はそういう歌はほとんど獲られていません)必ずしも、その歌自体が駄目だったということではないのかもしれません。投稿先を峻別すると、選ばれる倍率もまた変わってくるかと思います。
投稿先の選び方なども、勉強会に盛り込む予定にしております。
■短歌の作り方 toron*クラス はじまります
toron*さんの短歌勉強会が、2024年1月21日よりスタートします。内容は「投稿のコツ・ノウハウ」を中心としたものです。うたの日への投稿を中心に短歌づくりをはじめ、その後新聞歌壇への投稿など投稿の場を広げたtoron*さん。2023年、うたの日の薔薇王に輝きました。
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toron*さんプロフィール
大阪府豊中市出身。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。