第2回AI歌壇、人間選者 髙良真実さんによる選評の発表です。
(髙良真実さんより発表原稿をお預かりして、短歌マガジンより発表させていただきます)
■自由詠部門 髙良真実選
【特選】
「わたし」と「はしる」心拍数が上がったら「走る私」に融け合っている/風吹く
→初句における助詞の斡旋に疑問があります。「「わたし」が「はしる」」ならば、下句での「融け合」うという叙述とより符合するのではないかと思いました。
以下の三点は、学生短歌会のころに短歌をはじめたての新入生へ伝えていたことですが、ここでも改めて書いておきます。
現代短歌では一字あけも技法の一つ。句ごとの一字あけはないほうがいい。
結句体言止めは大見得を切るようなもので、適切なタイミングで使いたい。
字余りでもいいから助詞抜きはやめたほうがいい。定型に振り回されているように見えるので。
【選外佳作:結句体言止め】
イヤホンの線に身体を繋いでは輸血のように聴いた音楽/あひる隊長
→この結句体言止めだと歌の眼目であるはずの、「輸血のように」聴くことよりも、どんな「音楽」を聴いたかのほうに焦点があたる書き方となってしまいます。
【選外佳作:助詞抜き】
ベランダで雨の残り香転がしてひとりもいいねと夜を吸い込む/琴里梨央
→「香転(こうてん?)」という謎の単語が一瞬見えるので「残り香を転がして」にしたほうが読みやすいと思います。
この足で土踏みしめたことのない私にどんな歌が、歌が/桜井弓月
→二句目に韻律上の体重をかけることができるので、「土を」と助詞を補った方がいいと思います。
【選外佳作:その他】
おかしいわ「せんたっき」は変換できて「すいぞっかん」はなんであかんの?/真嶋 澄
→初句でツッコミをいれているので結句に疑問形を置くのは適切でないかもしれません。
あのカフェにいつも京極夏彦みある客がいてそら恐ろしい/さとうきいろ
→この書き方だと京極夏彦本人なのか、それとも作品世界に登場しそうな人なのか判然としないところが画竜点睛を欠いています。
【選後雑感】
文語を使った歌がいくつかあって、普段文語を使っている身としては嬉しかったんですけど、文法的に賛同できない歌が多く、結局口語の歌ばかり挙げてしまいました。
■テーマ詠部門「ちいさな嘘」髙良真実選
【特選】
「わたべ」だと知らせぬままにメンバーズカードは二回更新された/かきもちり
→「わたなべ」さんの方が多いですからね。
【選後雑感】
全体的に抽象的な「小さな嘘」を詠んだ歌が多く見られました。恋愛に関連した嘘も多くありました。短歌は具体的な方がおもしろいと思います。このお題は難しいですね。
以上、人間選者 髙良真実さんによる選評でした。
次回の募集もはじまっております。みなさんの参加をお待ちしております。