チェスや将棋の世界。人間はもうAIに勝てないといわれています。
ですがそれで人がチェスや将棋を辞めてしまったかというとそんなことはありません。
昨今の将棋の盛り上がりなどをみているとよくわかります。
AIのほうが人より強くなろうが、みなさん人間どうしの競技を楽しんでいます。
よく考えてみれば、バイク、車など、人間が走るより速く移動できるツールがあるからといって、
人は陸上競技で競うことをやめていません。
陸上競技場でわざわざ「でも、車の方が速いよ!」とクレームを入れる人はいません。
AIや車は便利なツールであり人の能力を拡張しますが、競い合うものではない。
ツールの性能が高いことと、人間のできること。
同じカテゴリの中にあったとしても、
わたしたちはきちんと分離してそれらを見ることができる。
そういうことかなと思います。
■共創するが置換しない
将棋の世界では分離して見ることができているだけではなく、AIを対局の解説に取り込むということがおこなわれています。また、棋士のみなさんが日々の研究に組み込んだりしているという話をききます。
高い性能を持つツールをうまく取り込んでより自分を強くしているのです。
今、AIが生み出す詩はまだつたないですが、数年後という非常に近い将来、
人間がつくった詩と見分けがつかない作品をうみだすようになるでしょう。
そうなったとき、わたしたちは詩をつくることをやめるのでしょうか。
そうは思えません。
将棋がそうだったように、AIと人間は競い合う関係ではなくなり、
AIがうみだした詩と、人間がうみだした詩とは別のものとして
扱われるようになると思います。
そして、詩人の中にはAIをツールとして使いながら詩を作るひともあらわれるでしょう。
もちろんそのことで、詩の発表方法に変化は起きるとおもいます。
短歌でいえば、ライブの即詠に注目が集まるようになるでしょう。
眼の前の生身の人間からうみだされたものに高い価値を感じる。
その傾向が強まるかもしれません。
■AIと短歌
AIと詩の関係。短歌の世界で考えてみると、まず考えられるのが次の3つです。
AIによる評(評価をする)
AIによる作歌(AI単独でオリジナルの作品をつくる)
AIによる選(順位を決める)
1つめの評については既に活用をはじめているひともいるかと思います。
AIは短歌作品に対して、有益なアドバイスをしてくれるようになってきています。
三月から毎月短歌に投稿される現代語短歌の一首投稿すべてに対して
AI評を出力し、みなさんに見ていただける形にする試みを新たにスタートすることにしたのは、
完璧とはいえないもののAI評が参考に値するレベルになってきている、という判断からです。
短歌作品に対するAIによる評をまだみたことがない、というかたはぜひ三月中に発表される
AI評にも注目していただきたいと思います。
評についてはこのように、実用に近いレベルに近づいてきていますが、
上記2の作歌と、3の選については、まだ実用レベルから遠い状況です。
これらに関しても短歌技研というコミュニティで実用化に向けてオンラインコミュニティ「短歌空間」の短歌技研で試行がおこなわれています。
興味あるかたはお声がけください。
■AIと共創する短歌へのあたらしい感覚
昨日はじめたアンケートがあるのですが…その途中経過にとても驚いています。
このようなものです
(あくまで仮の話ですが…)AIが作った短歌だけの歌集が出版されました。買いますか?
選択肢は
A.絶対に買わない
B.立ち読みして良かったら買う
C.絶対に買う
D.その他
この4つです
わたしは当然、Aの「絶対に買わない」を9割近くの人が選ぶものだと考えていましたが
現在の結果はこのようなものです
絵画や音楽の世界だと、9割の人がAIのものは買わないと回答しているという話をきいたことがありますが、短歌だと3割だけなんです。
6割の人が良ければ買うと言っている。
これにはたいへんびっくりしました。
完全にAIだけで作った短歌でもちゃんと評価する、ということであれば、
AIをツールとして使いこなしながら最終的に人間が判断してうみだす短歌でも
受け入れてもらえるということではないでしょうか。
いちはやく、短歌の世界からAIをつかいこなした新しいかたちの歌人がうまれる可能性も感じています。
AIと短歌の世界には、すごく面白い未来が待っていそうな気がします。
( AI短歌プロジェクト ハッシュタグは「#AI短歌」です)