神様のような妹 バタ足で凪に小さな波を起こした / 日比野永遠
梅雨前のフラストレーション 愛らしくロングヘアーの泣く背にどうぞし / 山荷葉
音楽に思い出と恋を追加する 先輩のせいで二度と聴けない / 山荷葉
先輩を目で追うだけで終わってくギターと部活は恋の口実 / 山荷葉
空だって道端の花も見てないで ただ目の前に音楽がある / 山荷葉
微睡みが夜の枕に溶けるたび金魚のわたしが溺死を夢見る / 山荷葉
臆病でよかったねって抱きしめてあの日の僕に見せたい光 / あきの つき
軽快なステップを踏み先をゆく背を照らすのは無数の光 / あきの つき
あなたには綺麗なものだけ見せたいしお急ぎ便で星買っとくね / あきの つき
この先にあなたが選び駆け抜けるすべての道よ花道であれ / あきの つき
フルグラの『フル』になれない者同士ずっと仲良く生きていこうね / あきの つき
さらさらと 僕の心が 風化する 嘘をつくほど 愛は減るから / 杏樹
そして僕海を見たんだ明け暮れの飛び交う小さなアンビバレント / 東犀連
君も僕も死なない世界があれば 二人ぼっちの唄を歌おう / 無作為/tanka
二乗して虚数になると知った手の余白は零れて蝶になる / 無作為/tanka
ラフマニノフの響く森 永遠は心の中にある針葉樹 / 無作為/tanka
ジャイアントパンダが俺のもどかしい手を笹を食いながら見ている / 音忘信
過去の傷エレキギターを叩き込む神様なんかぶちのめしてよ / 地下二階
解脱こそ真の救いと説くならばなんでお前らまだここにいる / 地下二階
面倒なキャベツ千切りミキサーへ丁寧な暮らしなぞ知るかボケ / 地下二階
かわいいと思えるわたしになるために筋トレ化粧洗顔おしゃれ / 地下二階
最低限出来てりゃいいよ 死なんから あ・い・う・え・おはよう 此方は天国。 / 鮨田わさび
「おはよう」と元気な声で言うはずが、にわかに咳き込む君に幸あれ。 / 鮨田わさび
24時 別れを告げる鐘が鳴る 来世はわたし、王子様になる。 / 鮨田わさび
ふさいでた耳をひらけばゆぅるりとあなたの声がくらしはじめる / 宮緖かよ
からっぽのあなたの心満たすよう風よ無邪気に踊れと願う / 宮緖かよ
月を見るあなたを想い月を見る あなたをそっと見守る月を / 宮緖かよ
念のため雨具を用意しておくね雑多な声に濡れないように / 宮緖かよ
輪廻して結ばれるとか知らないしこの世でもっと話をしよう / 宮緖かよ
走馬灯より美しくなかった日だけど愛してるから、閃雷 / 二条冬枷
きみの手の温度は宇宙が始まった日の爆発の欠片の名残り火 / 二条冬枷
金魚鉢被ったきみの目から落つ無重力の水の名を教えて / 二条冬枷
秋風は少しさみしい きみの名が変わったときを思い出すから / 二条冬枷
もう二度と聞けないはずの人の歌 知らない人が口ずさんでる / 二条冬枷
春風が桜を含み息吹く夜《よ》は成層圏の星も瞬く / ポッカ
ニコチンを33ミリ吸う彼の紫煙で満たす肺が赤らむ / ポッカ
電柱を登る働き蟻を地に帰し駅へと走るメーデー / ポッカ
マンホールのうえ四股を踏む子が父の膝を目掛けつっぱるつっぱる / ポッカ
雨粒で溶け透き通る花びらの花脈《かみゃく》のひとつで僕は在りたい / ポッカ
涙にも無理に理由を付けたがる悪い癖だね全人類の / 空虚 シガイ
神様が忘れていった釣竿の如く聳える空のクレーン / 空虚 シガイ
道端の折れた日傘に重なりし会ってもいない天使の死骸 / 空虚 シガイ
まっすぐな線だけ引いて赤ペンを使いきりたい命のように / 空虚 シガイ
押し花にしてしまいたい想い出を明日もたぶん持て余してる / 空虚 シガイ
「かわいい」で世界と接続する人の過酸化水素水は可愛い / 水沢穂波
計算の通りに街を薙ぎながら走るメロスの方が好みだ / 違和
こなごなな日常集め詰め込んだ短くはない旅の旋律 / mojaraw
ノクターン9の2を弾くこの心はふるえてまるで子どものように/納戸青 / 納戸青
将来の夢に屋根まで剥がされて今は跡地を耕している / 小石岡なつ海
ぐんぐんと質量が増す怒り、から、かなしみ、鍋は吹きこぼれない / 一色凛夏
いろいろのいろいろのいろのいろいろがいろいろあっていろかわるいろ / はゆき咲くら
このせかいうそそのものときみがいうならみえてくるみえないものも / はゆき咲くら
あたりまえのまえがなくなる今ここが記念日となる宴うたかたに / はゆき咲くら
白玉は通りすがりの坂道で世にも不思議な桃パフェとなる / はゆき咲くら
短歌って自動書記とそっくりで白玉の音が聴こえるんだよ / はゆき咲くら
地球から見上げる宙は虚しくてペンを走らす午前三時 / 棚果
魔法かなお箸が止まる昼休みかわちいかわちいちいかわかわちい / 棚果
・枯れる花ただ見てないで少しだけ気に掛けていてきみの瞳で / 楠木冬海
・漠然と消費されてるきみがいるそんな世界が嫌いだ僕は / 楠木冬海
選択をせずに生まれた幽霊が僕を追い越し結婚していく / 芥川独り
義父母からロンする時は深々と一礼してから裏ドラめくる / アゲとチクワ
ぜんぶ過去 ゲラウェイ、ゲラウェイ もうずっと笑い死ぬまで逃げて行こうぜ / 乙村藍里
子らの声 張り合うブザー 跳ねる箸 アーケードにて 音漏れ参戦 / メタル麺
憧れた後ろ姿に目を閉じるあの夏の背が今も浮かぶの / 吟良(あきら)
歌詠い僕の味方は言葉だけ音に乗せるよ君に届けと / 吟良(あきら)
文字拾い言葉を作り歌になる心を込めて音で遊ぶよ / 吟良(あきら)
溢れゆく憂いならまだ止めないで心のままに流してしまえ / 吟良(あきら)
薄氷の上を歩くに慣れすぎた君の姿はもう見えなくて / 吟良(あきら)
軒下で雨に濡れ待つ置き配を可哀想にと開けずに暖め / /清風青嵐(せいふうせいらん)
ブルーベリージャム持ち上げて宇宙史の誰も読まない記述の隅で / Sand Pawns
粉砂糖ふったみたいにあまくなる 恋をしている 息をしている / みなみ
きみのため金魚の鉢を掃除する 長生きしろと念を込めつつ / みなみ
あかとしろ まだらの椿拾いつつ帰る道ごと押し花にする / みなみ
探偵がいないミステリ 毎日は味噌ひとつでも事件になって / みなみ
世の中に星が降る日がこなくても終わりの日には花の洪水 / みなみ
ひと匙のひらめきが降りてこなくても努力の歌を詠み続けよう / 天川まつり
たいていはひとりでなんでもできるのにひとりでいるとさみしくなるの / 天川まつり
君が夜落とした涙は星になり僕の夜道を照らしてくれる / 天川まつり
燃え尽きた後に生まれる鳥もいる君は何度も生まれ変われる / 天川まつり
「__ぞら」を見て問いを読まずに「あお」を書くきみの心の中のあおぞら / 白藤あめ
この鍵はだれかの指の味がする わたしいつでもひざまずけるよ / 蒼井杏
放課後を覚えているの君がよく舐めてた飴のレモンの香り / あおい
誰よりも早く会いたい閻魔様私の舌を柔く噛んでよ / 万年青二三歳
本年も春が来ましたあっけなく暗い気持ちの花見だって良い / みながわ
うんざりな夜にケーキを用意したわたしは光の当たるほうのデブ / みながわ
ポップスを演歌みたいに歌う人がわたしの歌で嘘みたいに泣く / みながわ
「馬場の給食費盗んだやついるか?」生徒は踊る馬場まで踊る / やまぐちわたる
銃口に綿毛いっぱいつめこんだ 撃てば世界を覆うたんぽぽ / 浅黄かな恵
プレイリストに春が来てから曲がれずに脱走してゆく回転木馬 / 乃上あつこ
感情は仕舞いこまれて逆光の裏山に取りだして見せあう / 小野小乃々
雨はもうじきあがるから薄ら日で編みあげてゆく虹のミサンガ / 小野小乃々
類義語が愛にはなくて朝焼けのいろをあなたは赤いと言った / 小野小乃々
「危ない」と縫い針までもうばわれて祖母は鳴らないレコードになる / 小野小乃々
冬瓜の煮ものが冷えるまでの間をちさき余生のように愛する / 小野小乃々
いつだって光を運んでくる犬の肉球はコーンスープの香り / 橘 亜季
深夜、君が攫った私の眠気 あくびにまぎれ帰還する午後 / ayumi
美しくなりたいと口に出しかけて唇を噛む 木っ端微塵だ / tanaka azusa
あの日から涙を見せずに立ち向かい心の傷は君になでられ / あづみのマルコ
いつまでも夢追いかけて諦めず歳を重ねてなおペンを持ち / あづみのマルコ
うすよごれ泥水すすってのた打ってそれでも夢を信じ歩むよ / あづみのマルコ
殴られて地団駄ふんで唾を吐く打ちのめされても目覚め、たたかえ / あづみのマルコ
今まさに奈落に向かい堕ちていく明日のパンを掴めその手で / あづみのマルコ
五と七がちょうど並んだ記念日に「詠む」と「読む」とを楽しみましょう / 青色紺色
星じゅうの不眠を集め膨らんだ毛を刈りやっと眠れる羊 / 雪丸
なあ羊 君が眠れぬ夜にはさ、一緒に数えよ、ええと ヤギとか / 雪丸
泣きながら触れても何も聞かないでホットココアをくれる自販機 / 雪丸
身投げした人の息の根止めに行くやさしいものに憧れたサメ / 雪丸
君は君それでいいんだ真夜中にチャーリー・ブラウンは僕に言うんだ / 葵七宝
別れ際 君に蹴られた春の日をゲームみたいに繰り返したい / ぼしゅん
或る冬に 君とつむいだ冒険をつづる小指に残るおしゃべり / ぼしゅん
恋に病み恋に溺れて縋るのは三十一文字のことばのまほう / ハク
幸せは多分君の形をしていて足があるから私から逃げる / ナクキザシ
君の手は詩文の上をてくてくと歩いていくよ弱強格で / 梅木袱紗
今まさに退く王子の瞳から宝石(いし)と姫とを奪え燕よ / waka_na
悶々としてる心に一滴の幸せ垂らせば雲が消え / 呂尚
階段を昇れば最後戻れないそれは君が望んだ事か / 呂尚
先走る君の気持ち遮ったあの日僕の瞳(メ)ここではなくて / 呂尚
泣いたって仕方がないと知った子の瞳の奥の永久凍土 / 藤平 怜
祈ります昔も今も人々はステンドグラスの下で明日も / DeU
ダーウィンに言わせてみればわたくしの怠惰も進化の過程なのです / 琴里梨央
青空に一羽のサギの飛ぶような そういうたぐいの孤独ください / 琴里梨央
正の字の最後の横線引くように新幹線が通過しました / 琴里梨央
注文の多い店はもう流行らない いらっしゃいませ おとなしくしろ / デヘラー
思春期のあなたが好きという空に最期のときはなれたらいいな / 大福
帰宅して目に入る冷めたコーヒーは我が子への愛 人間だもの / 大福
終電後ホームに一人立つように雑踏になれず何かを待つ日 / 大福
かくれんぼ逢魔が時の公園でみつけてくれた君いまいずこ / 大福
満を持し月夜に降りた天使たち 盃満ちて溢れんばかり / 大福
本宮を終へてしづかにさとびとが褻《ケ》にかへるころ冬がはじまる / ef(エフ)
つばくらめ飛び交ふ軒にわづかずつ光と熱がしみとほりゆく / ef(エフ)
・花を見て 今年は期待 薫る春 桃や林檎にゃ 負ける柚子でも / EMIYA
AIの時代が来ても 不器用な I LOVE YOU は 伝わらなくて / 円弧
流されてゆく花びらは波のよで思い出すここも 海だったこと / 小川ユキ
きみが泣く仕組みを知ってうす青い雪を降らせているスノードーム / 中山史花
さゆ、という響きやさしく朝の月を浮かべてくちびるに触れる白湯 / 中山史花
自転車を漕ぐきみの背に摑まって見た春、あんなにきれいな前科 / 中山史花
持ち帰るピザの重さをたしかめてひとつしかない心臓を振る / 中山史花
きみが送ってくれた写真を見返してこんなにまぶしい花だったこと / 中山史花
一言も漏らさず言葉を耳に詰め あたしあなたの弾丸になる / 胃口きょうだい
坂道を一人で登る寂しさが転げ落ちてく満月の夜 / まほろ
斯くなるは 徒花も花 咲き誇れ 天晴我ら ハッピーエンド / 笙蒔みみこ
およごうか ことばのうみでかたちなく どうかわたしを信じて。泣いて。 / 鈴木精良
きみを待つ間にできた歌もある明日のパンを買いに行こうか / 中村マコト
手を合わす時間が少しずつ長くなる子を待って鳥居を抜ける / 中村マコト
一頻り濡れた星空汽車のなか眠る眼鏡と夜とわたくし / 冬林 鮎
親指と人差し指と中指と薬指まで離れ目が合う / 冬林 鮎
音消えて共に見上げて白蓮の指を絡めて絶える泡沫 / 冬林 鮎
刻一刻花の命を詠う僕ずっと一緒に居られないから / 冬林 鮎
使い捨てばかりあふれるこの街に次降る雨のために干す傘 / 蒲生友人
遅刻の食パンにマーガリン。四つ角の彼等忽然と乱数で死す / 鳴瀧
生食パンの「生」の定義を問う前にさっさと服をきろよ生きろよ / 鳴瀧
腹筋以外の全ての動作は胸を張り顔を上げて行う / smoke
クチわるい人にビックリした まるで自分はそうでないかのように / smoke
変化する春の空気を撫でたくて開けた窓から迫り来る夏 / 独楽鳥
賢くはない犬だったしさよならの意味は伝わらなくてもいいよ / おさむ
いつまでも消えない君の足あとが溢れたままで私の心 / はなたや
街をゆく人の背に見る君の影追う私の目溜まる悲しさ / はなたや
鮮やかなひまわり畑を泳ぐときひかりをまとう魚《うお》となる子ら / 碧乃そら
お手本のとおりきれいに折り目つけぱふりとひらく四角の正しさ / 碧乃そら
なきがらをかくしたのです、あぢさゐのあをあをと咲く寺のお庭に / 碧乃そら
人間はすぐに名前をつけたがる生き物だから冷麦啜る / 柊琴乃
スキ・キライ いつも心はゆれ動くあなたの腕に抱かれていても / 春永睦月
気が付けば消え去っていた恋だった愛を知らないままの私の / 春永睦月
秋の朝余りに空が青かったあなたが煙に溶けてくあの日 / 春永睦月
五、七、五、七、七 それに縛られる自由不自由 歌なるものは / 春永睦月
近づけば離れなくてはいけなくてふたりの距離がすこしさみしい / 春永睦月
しんしんと降る雪でした色という色の全てを白にもどして / 可奈美
風吹けば桶屋が儲かると申します私が濡れれば風邪ひくあなた / 和田晴美
降れよ雨鳴れよ雷さもなくばお前の横で泣けないだろう / 新棚のい
鯉のぼり連なる過去と未来から光る川越え戻っておいで / ひらいあかる
夢の中駆けているのか灯火が消える間際に一声鳴いて / 月立耀
ネモフィラの色で染まればようやくと 君を忘れることが出来るの / 月立耀
強盗と裏金の差はどこにある手が届かなくなるシャウエッセン / 中島彩
石橋は叩き過ぎるし占いは悪い所を忘れられない / ひなとと。
悲しみのための毛布を投げる日は闇より早くあなたが触れて / 膝借
降り注ぐ太陽明るいオレンジのリップで乙女恋せよ五月 / 夏木汐里
これは檻。サイケデリアを抱く吾がその罪人どもを閉じ込めて / 星の残骸
「それはただのゆめ物語」ほんたうはさうなんだらうね 夜の月影 / 星の残骸
傷つくと 気にしないふり もう慣れて ほんとの感情 さえも忘れた / 初七
わたあめのかわいい食べ方わからずにただわらうだけそれだけでいい / 初七
いつ咲くのだれもしらない開花時期 いいじゃん好きなタイミングでさ / 初七
包み込む 絶対的な 安心感 目覚めたらすぐ 消えるぬくもり / 初七
寝たらまた 全て忘れて やりなおし ご機嫌なまま おはよう世界 / 初七
涙から涙を呼んだ秋麗 少年悲話のため竜胆 / 詩歩子
この遺書にクアトロフォルマッジと書けば僕を忘れずいてくれますか / ケムニマキコ
笑顔だけ撫でられたらいい帰り道チューとかせずに生きてもいいね / 宮岡机
洗濯機回している間に懺悔して暮らしの余白を痛みで埋める / 宮岡机
だめな自分チョコアイスだと誤認してニタニタベタベタ溶けながら死ぬ / 宮岡机
ほんとうを言えば言うほど美しい君がマイクを置いた日のこと / 宮岡机
花束を買って自分の棘を知る許されるため痛みに泣こう / 宮岡机
離れた日愛のおもさを知ったから笑顔で乗れる体重計 / 1°みちよ
身勝手に進み始めた命なら終点だけは選ばせてほしい / 1°みちよ
いつの日か盃を世に置き去る身ゆえ今いとおしむ酔いのさざめき / 一福千遥
吾は針 鉄分溜めて じっと待つ麗しき磁石 近づくときを / いちろう
風邪ひいて少し体温上がってる初恋の日と同じくらいに / イマムラ・コー
わたしたち言葉じゃなくて音を聴く渚 番の巻貝を飼う / インアン
絶え絶えに一日終えるぼくらにも カラースプレー アラザンかけて / ioioi
ひんやりと金木犀を香らせる雨がテラスを天の川にする / ioioi
遠く鳴る雷みたいに他人事《ひとごと》に思えてしまい遅れる相槌 / ioioi
何者かになるのだ なるはずだったのだ ハリガネムシに誘われる池 / ioioi
微炭酸やさしく舞って もう僕のスノードームに雪は降らない / ioioi
読点を打つかのごとくヨコハマの腑に落ちていく旅先の酒 / 一筆居士
みなさまの役に立ちたい(わたくしが決して苦しくならぬ範囲で) / 伊津見トシヤ
おおきめのじゃがいもとして席に着き午後の会議に煮崩れてゆく / 伊津見トシヤ
黒板に白いチョークで描く傘に二人の名前入れ水入らず / 有栖堂 元旦
すこしだけ初夏の陽射しに貸しておく次の主人を待つ金魚鉢 / 神保一二三
美しい赤と緑と青の羽君はなかなかカメラで撮れず / 須藤純貴
「最近は」と言うのをやめて僕たちは目ざとく見つけた石ころを蹴る / ユミヨシアユム
さらさらと花が流れていくような5月7日のタイムライン / かがり
我もそっと花を流してみむとして言の葉の陰探す宵口 / かがり
橙が水晶体を通過してあなたの胸で反射する夕 / 融解
見上げれば働くことはうつくしく白色灯のお祭りでした / 岡田捺那
しっぽまで餡の入ったあったかい鯛焼きくらいの幸せでいい / 静句かも
過ぎたるは、の意味を知った。100本は多すぎだった線香花火 / さんそ
加害者になって生きよう花束を家で何度も看取った罪で / 錦木 圭
千年の果てもあなたを詠むだろう数えきれない月の断面 / 錦木 圭
祝日にアールグレイを淹れるのは祈りの別名であると思う / 錦木 圭
決められた最終章も咲き終えた朝顔のごと永訣したい / 錦木 圭
霧雨が僕の上だけ針になるような世界でまだ晴れを待つ / 錦木 圭
まなうらに百年枯れない花があり、あなたをわすれても水をやる / 久我山景色
ウエディングブーケで殴られ垂れてくる鼻血の赤は白に映えるね / 久我山景色
雨の夜、幽霊坂に出る噂 百合をたずさえいま会いにゆく / 久我山景色
浴槽にそっと沈んでオフィーリアごっこをしたら夏はすぐそこ / 久我山景色
紫陽花が憂鬱そうにうつむいて、ハロワ帰りにおなじ姿勢を / 久我山景色
夜桜をあなたが撮ればぬばたまに続く言葉に春が加わる / 楢原もか
三十分オペレーターを増員し待っていたのに君の電話を / 宇井モナミ
充電をしてくださいと訴えるスマートフォンの死を見届ける / 宇井モナミ
知恵の実は半分こしよなぞなぞは一緒に解いた方が楽しい / 宇井モナミ
あなたとの時間をほどく次々と見もせず消した写真フォルダを / 宇井モナミ
流星よ夜が明けぬ限り飛べ子らが願いをかけ終えるまで / 宇井モナミ
流行り病のワクチンを大量に捨てた小さい記事を見付けた / 菊池洋勝
病食の冷奴に生姜醤油と白飯をぐちやぐちやにしたやつ / 菊池洋勝
生活をやめるのですかその紐で何度もきみに蝶をあげたい / 霧島あきら
青じゃない言葉を尽くす白杖のあなたに海の色を問われて / 北谷雪
映らない側のかなしみ告白をぽつんとトークに投げ込んでみる / 風野瑞人
断片がすべてを語ることもある 紅茶の茶葉が対流している / 風野瑞人
砂漠では砂漠の匂い泥ねいは泥ねいの匂い 生きているんだ / 風野瑞人
ゆっくりと月にのまれるバンパイア 牙を隠せるひとなどいない / 風野瑞人
逆光の描く輪郭 その顔にやさしい瞳はまだ見えますか / 風野瑞人
ストーブをしまう春の日来年も会おうときつく結ぶ約束 / ながしまけんた
しぐれ煮のしぐれに寒さと暖かさあなたと作る幸せの雨 / ながしまけんた
先っちょの桜が散ったすぐそばであくびを一つ風に浮かべた / ながしまけんた
いつからか呼吸の仕方を忘れてて焦燥感に溺れる日々だ / 小千谷佳夏
あとは死に向かうだけだ、と言う父が迎えた52年目の朝 / 小千谷佳夏
図書館の耳をつんざく静けさが嫌い次こそ射殺されそう / 小千谷佳夏
メルカリで売ったDSそういえば中途半端に終えた冒険 / 小千谷佳夏
欲張って憧れだけがふくらんでなんにも手には入らなくって / 小千谷佳夏
「泣きたい」と書けば赤字で直されて歌の中でも素直に泣けぬ / くらたか湖春
カギ括弧つけたいことば飲み込んでどこかにずっと引っかけたまま / くらたか湖春
突然に「好き」と言われて飛び出したハートは黒ひげ危機一髪だ / くらたか湖春
改札できみを待つとき一輪の花の心地で背筋をのばす / くらたか湖春
秋風に乗ってペダルを漕ぎ出せば少し広がるわたしの陣地 / くらたか湖春
猫の毛は掃除機かけるたびに減り死んだことさえ吸い込まれてゆく / 古城えつ
うつくしいものから順に壊すとき君が最初にならないように / つし
どこにでも行けると思ったたんぽぽは廃止になった駅で咲いてる / 小倉るい
もし僕があと二駅で降りたなら君が笑顔で待ってる気がして / 藤瀬こうたろー
暑いから夏は嫌いと言う君がダイビングして僕なんかを知る / 藤瀬こうたろー
スプレーで壁にSummerと書かれててたぶん僕らが10代の夏だ / 藤瀬こうたろー
真夜中にブランコを漕ぐ音がしてああこの人もこじらせている / 藤瀬こうたろー
道化師を演じる僕にも春は来て仮面の上に花びらの降る / 藤瀬こうたろー
夜桜の欠片もろとも消えてゆく二人の覚悟月が聞いてた / これでも母
便箋が手紙に変わる瞬間を見届けているカフェの照明 / ことり
あなたの手のひらの上でピルエット気付いてほしいのにゼログラム / 鞘野
かくしごと、嘘に埋もれる僕の手を「見っけ」と優しく引いてほしい / 鞘野
街灯に紺色の傘翳したら雨粒はたちまち星になる / 鞘野
帰れない長い夕方明るくて東から来る祭りの気配 / 藤本くま
前向けば背中がいちばん遠い場所 追いかけたくなる自分でいたい / 暗がり
クラムボン何回読んでも正体はわからないけど「やまなし」を読む / 草流
踏まれても強く生き抜く蒲公英の神々しさを誰も知らない / 九条なびき
さよならはたぶん敬語でバイバイになったふたりはもう友達で / 真朱
(社会とは押し付けられた役割をこなすことだよ)有休を取る / 真朱
「僕よりも先に死なずにいて」というセリフを先に君に言われて / 真朱
オレとしか言わない君が「僕」なんて言って照れるの、かわいくて死ぬ / 真朱
「いつか」っていういつかなどないはずの今日だったから花束みたい / 真朱
どの場所も属せないから野良犬でいいと思った孤独を知る夜 / あまおと
手のひらにふわり降り立つ初桜 手帳に挟めばそこからが春 / コピラのたまご
歌うとき僕の「あなた」はいつも君 君の「あなた」は僕じゃなくても / コピラのたまご
まばたきの間に落丁する世界あなたのすべて見ていたいのに / コピラのたまご
放し飼いしている孤独は夜行性俺だけが知る遠吠えの意味 / コピラのたまご
いちばんになれないことはわかってたそれでもそばにいたかった バカ / コピラのたまご
セルロイド石けん箱を子宮にしひなの亡骸埋める夕暮れ / 小久保柚香(こくぼ ゆずか)
「波瑠」という海の名前を持つきみがわたしの海を決めてしまった / 楼瑠
みなおなじ揺れをしているつり革が掴んでくれる人を待ってる / りんか
花びらが散る日をまたず君はゆく 思い出はすべてきみのあしもと / りんか
ウイルスのようにあなたが忍びこむ 治せない恋、治らない愛 / りんか
一つ前の度数があわぬレンズには君とみた夢 残ったままで / りんか
いっぱいのペンキを買ってきたからね ボクは自由に虹がえがける / りんか
おずおずと青に踏み出す夕雲の雨後の和解を受け入れようか / 檜山省吾
やり直しできない人生だからこそエンドロールで光る君の名 / 村田
忘れられない傷跡にみどりいろしたピアスをつけてあるいてく / 水也
終わらせてあげたいなってゆるしてよもう終わらせてあげられないの / 水也
残響のゆれる足音きみの声夜明けが待っているはずの海 / 水也
逃げ出してしまいたかった晴れた空もうこないでよとは言えなくて / 水也
この夜が終わるまで輝いていて月の小舟で迎えにいくよ / 水也
余韻とは脳へしずかに降りる鈴 足をすりあわせて靴を脱ぐ / 石村まい
結婚式 病める時もとか言うけどさ10kg太っても好きでいるね / はる まきこ
マイダーリン 大森靖子の曲なんか死んでも聴かなそうなとこが好き / はる まきこ
言の葉を紡いだ数だけ募ってく言葉じゃ足りない君への気持ち / 静麗
泣きながらご飯食べるし肉焼くしパフェ大盛りでお願いします / マノチハル
おかあさん、きっと未来で会いましょう つぎは私の子どもになって / 唯有(ゆう)
照れくさいそう言いながら指つなぐ君とじゃないと空(宙)仰げない / あも
マーカーの 桜カラーが切れたからひまわりの色 つい買い足した / 幸 まゆか
おはようを言わない人におはようと言えば私のための晴天 / 吉村のぞみ
わたしもうなかまはずれになっちゃったから夜とふたりだけで話すね / 綿鍋和智子
蒼空を大海を垣間見ている #tanka《ハッシュタグたんか》 の小窓から / 憂杞
小さくてささやかだけど贈ります平和のタネを未来のヒトへ / あらぴぃ
灰色のわたしのままで服脱げばパチっと焦げた魂の先 / みつき美希
羊歯の葉の背骨をなでてカンブリアからきみまでの進化を思う / みつき美希
もう誰も戻って来ない教室で最後の青春談義をしよう / 辻風文尊
頼んでもないのになんで ピストンが入る体にしたの、神さま / 辻風文尊
短冊に「世界平和♡」と書いていた少女は本当の戦を知らない / 辻風文尊
エアコンをつけても効かぬ真夏日に感じ取るのは八月の風 / 辻風文尊
アイライン目尻はみ出すその長さは個性殺さぬ決意表明 / 辻風文尊
眼下には僕らの街のあかるさの こんなに遠いけれど、手をふる / 三紙
思い出を胸に秘め翔べ大好きな人の様に夢に向かう / 未宇
子は家で皇帝として君臨し外ではダンゴムシから逃げる / 水川怜
君ときたプラネタリウムは繭としてきらめく星と綴じられていた / 水の眠り
書店には幸せになれる本ならび 答えはそこにないと知ってる / 水の眠り
眩しさも暗転さえも一日を閉じゆくために眼鏡をはずす / 水の眠り
クレームに頭をさげた帰宅後のシャワーの弱い水圧に泣く / 水の眠り
家系図の最後をかざるわたくしは進化の大樹の美しい枝 / 水の眠り
天国の地獄支店で暮らそうよ花の煙草を吸って待ってる / 牧角うら
現し世はキュート風車はピンクあなたのことはいつか恐山《おやま》で / 岩瀬百
実名も顔も出せないわれの手で海に浮かべる闘いのうた / 月夜の雨
心だけ飛ばせば何も感じません痛みも何も感じません / 月夜の雨
息を吐き「サバイバー」と書くプロフ欄われの形をわれは縁取る / 月夜の雨
死にたいと何度も書いて書くうちに最後の行が助けてになる / 月夜の雨
吐く息は床にこぼれて染みになり頭上で嗤う声が聞こえる / 月夜の雨
薄紅の街路樹越しに目が合った 君を見つけて今日春を知る / 朝丘
ハロー、ニューワールド 君が君だけの色ではじめるすべてに愛を / 睦月 雪花
噛むたびに 耳をすませば 味わえる レタスやナッツの 音楽祭り / mura2@グルメ短歌を詠む人
レントゲンCT撮れども映らないわたしのこころはどこにあるかな / 卯海憂ナギサ
十本の芍薬たちを胸に抱き 甘い香りに私も抱かれる / 水柿菜か
西の空飛行機雲が伸びてゆく読みかけの本持て余す午後 / なんちてかやこ
そういえば詩とか俳句とか短歌とか好きだったなと思い出す冬 / なんちてかやこ
五と七で繋がっていくあなたとも千年前の貴公子たちも / 虚見津山都(そらみつやまと)
デイケアを遊ぶところという母は職員さんを先生と呼ぶ / 塚本直生
施設には死んでもいかぬという母の眼(まなこ)の奥に閃く矜恃 / 塚本直生
会う度にネバーランドに行きたがる君は昼間の星に似ていた / 猫背の犬
俺の分まで生きろよな呼んだって走ってこない犬なんだから / 猫背の犬
カブトムシみたいな影を引き連れて愛を歌いにゆくバンドマン / 猫背の犬
お互いの生命線を見せ合って短い方が犬を引き取る / 猫背の犬
片翼の折れた天使が泣きながら獣医科医院の扉を叩く / 猫背の犬
海思う幽霊だけを取り残し初夏を走る終点熱海 / ねねこ
眼裏《まなうら》に雲のギャラリーあの昼に言いかけたことをいつか教えて / 森内詩紋
天国はこちら先着一名様残りは全部地獄に落ちます / 七
たんぽぽを手折らないよう種飛ばす君の吐息を春風と呼ぶ / 新妻ネトラ
木が剣に君が勇者に変わる時地平線へと変わるグランド / 新妻ネトラ
四つ葉摘み踏まれた草の幸せを私は探す春の終わりに / 新妻ネトラ
好きでいてほしいというか嫌われる前に世界が滅びますように / おばけ/金田冬一
憧れの街の住人として書く新住所から流れるワルツ / 奥 かすみ
油性って気づいていても伝えずにいられなかった好きだってこと / 奥 かすみ
皮付きのリンゴに齧りつく音は闘志みなぎる朝の号令 / 奥 かすみ
待ちわびた新刊買えばピッというスキャン音さえ半音高い / 奥 かすみ
逃げたいと思った日にもアンパンは甘く包んだやさしさだった / 奥 かすみ
言語化がすべてじゃないし宙に浮くこの感情の輪郭が好き / 新奈
万華鏡みたいな人だ 幸福の隙間に見える悲しみの色 / 時雨
かわいらしくおどろく練習をしている生涯殺されない前提で / 古川未雪
愛したい星人 春の心臓を見つけた犬に翼与えた / 古川未雪
大股の一歩でまたぐふりをして見えない土に生む水たまり / 鈴木ベルキ
ロイホで頼めるくらいの幸福を人はパーフェクトと呼んでいる / 綿芝晶
「る」から始まるしりとりで得意げに我が名を呼べとルビーがひかる / 綿芝晶
100人の悪党を素手で倒しきり まだ5限目も半ばのあくび / 綿芝晶
「新しい朝が来ました」聞き慣れたメタルバンドのデスボの意訳 / 綿芝晶
「PayPay!」と可愛い断末魔の後にゴトリと落ちるエナジードリンク / 綿芝晶
好きな具の一等賞というこんにゃくの ぴととより添うからしになりたい / こみき
どの花もはじめて咲いているくせに咲き慣れていて僕はさみしい / ぷくぷく
あさぼらんボブディランを聴きながらん頑張るなんていわないかね / 雨
大抵のことは最後に草つけて月もでかいよ知らんけど / 雨
高2.99のレディが選んだ黒い服と早めのシャワー / 雨
たとえば吾 エロを囁くLINEより歌を読みたい 歌を詠みたい / 雨
もし子宮海に返して漂えばわたしの膣はどこに繋がる / 雨
石を割る 幾億年が紐解かれ眠れる羊歯に触れたそよ風 / 卯乃
アリキックいつでも出せる体勢で今日も地球の平和を守る / ぐりこ
神の愛貪るように酒浸り 天使は前歯がないのが多い / ぐりこ
リュウグウノツカイの頭のびらびらに嫉妬の炎を燃やすタチウオ / ぐりこ
終わりにも流儀があって彗星はまた逢うために長く尾をひく / ぐりこ
昨日まで穴のなかった耳たぶに自分でぶっ挿すアイデンティティ / ぐりこ
大好きに嫉妬を絡めた真夜中のめんへら気質の恋人の詩 / 水草
「元カノ」と君は私を呼ぶけれど今すぐ「元」を外してもいいよ / 遠藤ミサキ
いつも死を感じていたい コンビニのおにぎりは死の集合体なり / アサコル
倒れても一番支障のない柱だけを残して全部倒れた / 汐留ライス
ピッチャーで頼んだ後に気が付いた誰もビールを欲していない / 汐留ライス
灼熱の砂漠に追放されたのに深爪ばかり気にしてしまう / 汐留ライス
僕たちの最後の共同作業だろう死んだマグロを樹海に埋める / 汐留ライス
その夜にあなたが眠れないでいた理由などカビゴンは知らない / 汐留ライス
鍵盤の上でステップ踏む君と共に踊れば愛の連弾 / れいこ
月想う夜を奏でて風に舞う 祈りがいつか届いたのなら / 舞風 奏-かなで-
キラキラとひかる思い出しまう場所分からないから終われずにいる / 柚ルリ
美味しいねそのひと言が聞きたくて祖母とシェアするピラフひと皿 / カワシマサチヨ
魂の闇夜は永く道もなくいのちの果ての天津甕星《あまつみかぼし》 / 壱羽烏有
干し草がハイジを受けとめるように絵本のページをゆっくりめくる / さく
でたらめに愛を歌えば流行りだす愛に流行りもクソもないのに / 櫻井さん。
君でなきゃ話せたな でも君でなきゃ話したいとは思わなかったな / 佐々木さん
「喪失」と「卒業」の差が埋まる頃 裸の心で一つになれる / 佐々木さん
現世(うつつよ)に信じられるものはないんだよ野暮を言うな格好悪い / @ SBRH ISM
覚えることすらできないのに忘れることなんて覚えられないわ / @ SBRH ISM
墓はいらんが布団サイズのガリガリ君の棒を卒塔婆にしてよ / @ SBRH ISM
いまを辞めていまを始めることできのうとあしたが出来上がります / @ SBRH ISM
やりたいことはたくさんけどさきはないからできなかったことをやる / @ SBRH ISM
透明な夜にあなたと見る月に辞書に載らない意味を持たせた / 佐竹紫円
普通ってむしろ奇跡ね何事もなく朝焼けが光る、生きてる / 白波はるよ
「とりあえず生ビールでいい?」ぐらい聞ける仲にはなったかな僕ら / ただのたなか
ゆび運びラスト転調むずかしきYOASOBIの笛はなれ聴くひと / 佐々木ゆか
燃えつきた被災地の報知りつつも希望がほしく聴きぬうたごえ / 佐々木ゆか
「ドラゴン桜2」でも観てまつもうすぐに何かが起こると世は騒いでる / 佐々木ゆか
祈ることふえゆきしこのコロナ禍の世界の闇がみえてこれから / 佐々木ゆか
アビシニアン描いてみようか来世みる長き脚だと山中智恵子は / 佐々木ゆか
モノクロの世界に揺れる円環でいつかあなたと虹をみたいな / Si
もう模様か花かも分からない春に塗れた道を行く / しあん
軽やかで初々しくて繊細でゆえに鬼とはなる獣がいる / 祥
どこまでも青い水平線があり海を見ていた恐竜がいた / 祥
言葉から言葉へ渡すバトンがある名もない人の無数のバトン / 祥
#短歌の日 花蓮という美しい名を持つ都市や珠洲という名の奥能登の町 / 祥
野の草が風にもゆれて寄る蝶の人恋ふように花と戯れ / 祥
隣家の子今日も裸足で座りこむこの国からは神も逃げたか / 藍沢空
弾いている今は生きてるたとえ明日自死を余儀なくされるとしても / 五十嵐創
踏みにじる土足の目には映らない美しい花ばかり傷つく / 五十嵐創
こうやって泳げと事も無げに説くあなたは私の海を知らない / 五十嵐創
見たことのない大空へ駆けてゆく恋をしているような速さで / 五十嵐創
迷いない心の翼で翔んでゆく私の空はどこまでも澄む / 五十嵐創
spring わきでてくる みず はな ひかり のまれていくね さみしくなるね / えふぇ
ずっとってずっとじゃなくてもいいんだよ ちょうちょむすびの端を引っ張る / えふぇ
ペル ア モ ラ テ ユムあなたの唇も物語を織る機になるのよ / えふぇ
波音は止まない 光の方じゃなく今は光の差す場所にいる / えふぇ
この森にもうオオカミはいませんよ いのちはずっといのちでしたよ / えふぇ
アンテナに鳥/しあわせが来たことを知らない君は起きるころかな / sonrisade
さみどりの布を裁つごと自転車で五月の坂を一気に下る / そらあつ
廃線の跡が遥かに延びる地を彩ってゆくセイヨウタンポポ / そらあつ
十日前にも食べたよね、いちご味。旬だし今日は十五日だし。 / 勿忘ゆら
同じこときみと同時に思いつくたんぽぽみたいな幸せがいい / 山口絢子
ベランダに満ちるひかりを浴びながら俺より春を謳歌するシャツ / みくに
大切なことは忘れて友達のずっと覚えている誕生日 / 有野 安津
無人島に持っていきたい本だけを梱包してく引越し前夜 / さとうきいろ
かき氷屋さんに続く行列を君とガリガリ君と眺める / さとうきいろ
スーパーで投げ売りされる使い切りサイズの希望三つで千円 / さとうきいろ
タンポポの綿毛は希望できるだけ孤独なひとの目の前で咲け / 睡密堂(すいみつどう)
日めくりをめくり忘れていっぺんに破る今日までの日々の厚さ / 睡密堂(すいみつどう)
昼の月ほどの淡さでさりげなくあなたのそばで役に立ちたい / 睡密堂(すいみつどう)
最終回だけ見て泣けるきみのその柔らかな心が妬ましい / 睡密堂(すいみつどう)
傷むのが悲しくて買わない花を束で渡されぎこちなく笑む / 睡密堂(すいみつどう)
お茶っ葉をザザザと茶漉しに敷く君とゆっくり家族になってゆきます / 白鳥
生活にスリルもドラマもいらなくて透明な犬でも飼おうかと / 白鳥
きみだけが必要なんだと囁いて白身飲み込む日々もあったな / 白鳥
待ち合わせ場所に駆け寄る君を見てすでに満点だった土曜日 / 白鳥
ブランコで描く円弧で助走して月の音階巡る冒険 / 白鳥
あの星の知らない花の冠をくれたあの子を枯れても探す / 銀浪
きみのこと愛してしまっただけなのにまるで私が悪者みたい / 三〇五
いっせいに譜をめくるとき放課後の音楽室はすこし草原 / あひる隊長
アリスインワンダーランドさよならのためにあなたといるわけじゃない / 初夢
インディーズへと戻り来て新曲は離陸のような歌声だった / 塩本抄
ひとしきり星座の話をした空に意味しかなくてずっと見てる火 / 塩本抄
三人でまずは山葵を擦りおろすみな告白を持ち寄りながら / 塩本抄
鈍色の冬の悪夢をみな食べてしまえつくしのやわらかな牙 / 塩本抄
弟の歩みは遅いひとつひとつ路傍の神に頭を下げて / 塩本抄
いくつめの幸せですか 回廊を君とは逆に廻っています / 短歌パンダ
睡蓮は春ののけもの目をとじてごらんだなんて誰がいったの / 短歌パンダ
ポイントの募金で生をつなぐ子と私は何を話すだろうか / 短歌パンダ
すれちがう人に興味ある犬と興味ない人と、すれちがう / 短歌パンダ
性欲と打算を抜いてまだ少し味がするので しおりを作る / 短歌パンダ
おみくじのようにあなたと引き抜けばどっちも春のいちごポッキー / 哲々
その秘めた言葉をもって君を刺す 傷口に角砂糖を入れて / 天獄あお
靴の中、はいった砂をこぼすとき 転んだ先にきみがいること / 天獄あお
水際を歩く ぼくらは服を着たまんま泳げないことも忘れて / 天獄あお
花魔法 きみに手渡す鬱金香 しろときいろは深紅に染まる / 天獄あお
くらげの骨を噛み砕く深海魚 七つ数えて息つぎをする / 天獄あお
傷ついたと言えるお前が横に居て金剛石になるしかなかった / ぺぺいん
YHA-YHA-YHA!ってはじけて生えてたつくし達おひたしになりしゅっとしぼんだ / ぺぺいん
レイ君と呼べばいつでも飛んできたあの子が渡れぬ虹かかる橋 / ぺぺいん
ぼぼぼぼと風鳴く空でタオル一枚サーフィンしてる / たけま
イケメンの黄金比率考えて定規持ち出し日暮れとなる日 / たけま
動物と話せる魔法を覚えたが早速鳩に「邪魔」と言われた / Tsugumi
その色に毒を含むは彼岸花さぞや前世は名のある悪女 / T・G・ヤンデルセン
海を知らぬ星の生まれの人の手を胸に押し当て これが波です / T・G・ヤンデルセン
だとしてもあなたのくれたあの歌は僕にやさしい御守りでした / T・G・ヤンデルセン
ポケットの中で電池を握りしめ明るいひとになろうとしてる / T・G・ヤンデルセン
疾く、疾く、と 鼓動は停まり、もう何もあなたを急かすものは居ません / T・G・ヤンデルセン
なるはやで走って来てね去年とは違う蕾で待っているから / 如月十
桃花眼母の色濃く赦せずに 吸いきるツツジの桃色混じり / とかげまろぅ
「神様の創る王国」プラカード無視し文転しようか迷う / とかげまろぅ
弱いこと見せないことは強さかと剥製になったニホンオオカミ / とかげまろぅ
心臓のないクラゲにも胃はあってまた半袖の着られない夏 / とかげまろぅ
色褪せぬ君への想い秘めたまま平凡な日々愛しむわたし / とも凛
ガソリン車なきツェルマットを行く馬車よ青天を衝くマッターホルン / 椿泰文
転調に気付かなくても音楽はあなたのためにあるよ 触れて / 畳川鷺々
平たくて和やかですね環状線ここからあそこまで逆走しましょう / 畳川鷺々
一番になれなかった星ゆびさしてとくべつじゃない夜をはじめる / 畳川鷺々
夜を徹し音と戯れその果てにうつくしすぎる睡魔と踊る / 畳川鷺々
ぼくたちはぼくたちらしく靴下の裏も表もないものとして / 畳川鷺々
お茶碗を持つほうが右 わたしだけ鏡の中で息をしている / つむり
フライパン片手で揺さぶるガシガシとゴーヤ炒める若さっていい / つるじい
ただ一羽草原に立つキセキレイ横姿して旅の中かな / つるじい
白鷺の小川を歩く踏みゆけば静かな時の流るるごとし / つるじい
青になれ、いつも思っているけれど桜並木は赤が嬉しい / 高橋新
息継ぎがうまくできない世の中を酸欠気味で泳ぎ続ける / 高橋新
霊園に続くツツジは満開にこの世、あの世もサツキの空よ / 梅雨すみれ
この地球は何色だろう胎内はピンクだったと答えし君の / 梅雨すみれ
群衆は絵画のように飾られて手紙が届く本物にだけ / 梅雨すみれ
砂浜に打ち上げられたクジラなら何億光年耐えられようか / 梅雨すみれ
タンポポもレンゲ、スミレもおしなべて みなうつくしい みなたくましい / 梅雨すみれ
文豪の夜のボタンの詩に添えて先輩が描くラクガキが好き / 朱虹
少しだけ夜明けがはやい方角の東口にてきみを待ちたい / たんかちゃん
とん、とん、と値引きシールを貼っていく子を眠らせるようなリズムで / 梅鶏
捕まえた言葉をすぐに食べないで心の枝に突き刺している / ツキミサキ
現れたⅩⅥ《じゅうろくばん》のカード言う「終わらせないと始められない」 / ツキミサキ
受けとめる愛がなければ不成立阿吽の呼吸ドロップキック / ツキミサキ
深夜2時温泉宿でひとりきり露天風呂にて月をすくって / ツキミサキ
投げ出した炬燵の中の我が足に身体預ける猫の重さよ / ツキミサキ
もう意味を素手で掴めるところまできていて蝉の眼は背中《せな》にある / うゆに
15分小さな扉そっと開け迎えにくるねと涙する / ころも
母ひとりこぼれぬようにかき集めシリンジの中5ml / ころも
夕焼けにやさしく橋は錆びついてわたしにたったひとりの母さん / 鳥さんの瞼
死にたいし、あえて落としたクッキーを3秒待ってから食べてみる。 / 烏龍
コーラすら透明になる世の中で、十人十色の意味を教えて。 / 烏龍
誰も見つけてくれなくていいよ。人知れず咲いて、泣いて花になる。 / 烏龍
誰かへの憧れと真似積み上がり 気付けば僕にしかない魅力 / ころころ
抱きあって泣いて笑ってそれからの「おやすみ」はさよならのビブラート / 一森さくら。
引っ掻いた痕の消えない脇腹の私を抱こうと思うな君は / 一森さくら。
とてつもなくやさしい嘘をつくようにシフォンケーキは静かに弾む / 一森さくら。
燃えさしの香がぼそりと立っていたごめんね、全うさせられなくて / 八木聖
寝る前に重石を六つ置いてくれもっと上手に沈めるように / 八木聖
君がまだ自覚してない初夏の微かな日焼けに気づいてしまう / ヤマメ
祖母ひとり留守の分だけ体感の温度が下がる春のリビング / ヤマメ
もういない猫の記憶が鮮明でほんとに愛してたんだと思う / ヤマメ
アキネーターみたいな医者に「鬱です」と診断されて秋の幕開け / ヤマメ
タイトルのない休日も容赦なくエンドロールは流れる仕組み / ヤマメ
自分でも分からぬ何かになりたくて詠い続けるマージナル·マン / Yella
筋書きに元より居ない二人なら踏み外すのもきっと簡単 / 宵待
エポニーヌ、わたしも恋をしたけれど死を代わりたいとは思わなかった / 瀬生ゆう子
死と君がなにか話しているあいだ僕は初めて作曲をした / 瀬生ゆう子
ハンカチに傷だらけのきみふんわりと包んで乗った寝台特急 / 瀬生ゆう子
ひとりがいいなんて思うほど一緒にいてくれた人たち、ありがと / 瀬生ゆう子
教壇で舞姫語るセンセイもずるくて可愛い男に見える / 淀美 佑子
思い出を手に持てるだけ持っていて悲しいときに傷に貼るんだ / 夜風
短歌の日口下手なわたしの話と沈黙と丸ごと受け取るあなたで良かった / よさく
泥水に空の青さを映したら愚かな鳥が堕ちるでしょうか / よしなに
ひび割れたペアのカップを捨てたなら珈琲色の空に新月 / よしなに
この花器に私を生ける 咲きもせず愛でられもせずただ粛々と / よしなに
お互いが前に進めていることの答え合わせのような再会 / 好乃智紀
いつきみと再会してもいいようにずっと背筋を伸ばして歩く / 好乃智紀
明細書見るたびヒッと声がでる便利便利のカネ喰い虫め / 良井ハウラ
いつか先太陽系もはてた先誰かみつけて私の声を / 良井ハウラ
ガタゴトと車輪重くも肩は華奢花のかんばせあやつる列車 / 良井ハウラ
上野発大阪行の白鳥に乗る夢今はもう叶わない / とんだ一杯食わせ者
この世からテレビラジオがなくなってラテの写真で埋まるラテ欄 / とんだ一杯食わせ者
ラブレター砂に書かれた絵文字たち解読中に満ち潮になる / とんだ一杯食わせ者
送電線と沈む夕日を追いかける我等にブレーキ「ごはんよ」の声 / とんだ一杯食わせ者
人間の付けた名前で呼び合って笑い転げる虫や花たち / ゆひ
目に映る君の姿を忘れない同じ時代に出逢えた奇跡 / 織部ゆい
柵越しの母校無人のブランコをキョウコキョウコとから風が押す / 結城熊雄
資本主義時代のLOVE somebody 手放さない為に別れてく二人 / 未多来
なんとなく誰にも会いたくない夜はどうにか燃えるゴミを捨てにゆく / 未多来
この星のあらゆる重さを振り切って明日また君におはようを言う / 未多来
起きて5分で家を出るこの生活をいつの間に君がパンで挟んだ / 未多来
曖昧の まにまに あわひ少しだけ まよってあいわなめにめに 甘いの / 未多来
朝光にコーヒーの香は柔らかく時を注いで今日をはじめる / 間由美
三毛猫はガラスの鉢で溶けるから起こさぬように優しく混ぜる / ゆっくんがあらわれた
思ってもわざわざ言わない言葉たち 短歌に生まれて会えてよかった / 夕空
花に触れ 落つる雨は アムリタ 眉間で弾け 唇を潤す / 青鳥凛空
春に逝きしギタリストは空を駆け若葉を鳴らす風となりて来 / 桜井弓月
春雨は降り止まぬまま黄金の天から光射して夕暮れ / 桜井弓月
何にでもなれると思い込んでいる若葉の若葉色の眩しさ / 桜井弓月
新緑とハナダイコンと山吹を春の三原色と名付けん / 桜井弓月
この生を我しか生きられぬ孤独 同じ若葉は二枚となくて / 桜井弓月
最終の電車に揺られてチェロ弾きとチェロは同じ角度で眠る / ZENMI
くらげ舞う町で鳶《とんび》に油揚げ 月がまるくて三角関係 / じもぶん
悲しいことなんにもないな目を閉じればなんか泣きたい日のフェイクファー / 星谷麦
ふっくらとうぐいす餅の一番に鳴き出しそうなの選りてあがなう / ふじはる
差し入れの鳩サブレーが一羽ずつデスクで会議の終わるのを待つ / ふじはる
手羽元を煮込むあいだに付箋紙で歌集は翼を授けられてる / ふじはる
乱暴に煮込んでもまだ脛肉のかたちを保つ結婚記念日 / ふじはる
白飛びのような世界に飛び込んで影は身体に収まりきまる / 金谷シメ
フォローしているからだろう=僕の怠惰 君のいいね欄は切ない / 金谷シメ
自転車に一人で乗れるようになるピーマン嫌いなままの世界で / ふじはる
18で車を借りて真似をした彼女と聴いたスローバラード / 68
くらやみで春を待ってるこうもりは流線形の夢を見ている / 68
待ち時間ベンチに座り考える飼うことも無い犬の名前を / 68
7月の湿度で曇る週末を君の浴衣が支配している / 68
深夜2時 プリン並べる制服の背中丸めた君に見惚れる / 68
プレイリストに春が来てから曲がれずに脱走してゆく回転木馬 / 乃上あつこ
喜びも怒り哀しみ苦しみも短歌があって良かったと思う / (匿名)
ベランダで洗濯シーツの帆を上げろ難燃性の南南西よ / (匿名)
月影の窓を開けてもひとけなく風もないのにゆれるカーテン / (匿名)
謎解きの本を片手にうたた寝をそんな君こそ一番の謎よ / (匿名)
夏の蒼刈っても刈っても草生える庭にヤギでもいたらいいのに / (匿名)
照れくさいそう言いながら指つなぐ君とじゃないと空(宙)仰げない / (匿名)
棒きれを片手にあるく吾子の背に誘引されていく羊雲 / まちのあき
のぼりゆく時に立ち会う楽になるのね私で良かったのありがとうね / 砂葉
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