2024年4月5日(金)に全国公開される映画『パスト ライブス/再会』の試写をみたA短歌会:映画短歌空間のメンバーが、それぞれ感じたことを短歌にしました。
予告トレイラーをぜひ見ていただきたいのですが、バシバシと韓流恋愛ドラマの空気を感る作品です。韓流ドラマのエッセンスが一本の大人のラブストーリー映画になったと言ってもよいでしょう。これは引き込まれます。
■映画試写をみて短歌を寄せてくれたメンバー
春永睦月 @HarunagaMutsuki
瑞野明青 @inonagapenchan
深水英一郎 @fukamie
■トレイラー
■映画『パスト ライブス/再会』をみて(春永睦月)
あのときの少女は今もそこにいる 私とあなたが過ごした日々に
/春永睦月 (映画『パスト ライブス/再会』をみて)
人生という川の橋、その欄干に立つ二人。
時間を逆行することは叶わない。人は成長し変わっていく。橋を渡り向こう岸へと歩を進めたノラと、母国である韓国で時を過ごしたヘソン。2人は出会いと別れを繰り返し、大人となりアメリカで再会を果たした。ヘソンが見続けていたノラの思い出と、アメリカで伴侶を得て年齢を重ねたノラ。そこには「渡ることの叶わぬ」時という大河が流れていた。
2人の思い、ノラの夫の懊悩。ノラの夫とヘソンの会話。これは、誰にでも起こりうるかもしれぬ、けれど奇跡のような「心の結びつき」である。
愛とは何か、人生とは、人が成長することとは。思い出とは人にとって何なのか。映画は、そうした問いを私たちに静かに深く問いかけているように、私には感じられた。
これは、絆と信頼の物語だ。
「また、会おう」
ヘソンが告げた言葉が、ノラの胸に、私たちの胸に残響となり響き続けている。
【文・春永睦月】
■映画『パスト ライブス/再会』をみて(瑞野明青)
サヨナラと別れた道は今もなお君と僕とを隔てたままに
現世での縁の糸は君になくこの場所こそが私の未来
/瑞野明青 (『パスト ライブス/再会』をみて)
幼馴染のナヨンとヘソンは一度だけデートをしてさよならと別れた。ナヨンはノラと名のりアメリカに家族と移住をする。韓国に残ったヘソンはナヨンに会いたい思いから、SNSを使い探す。ネットがつなげる2人だったが、それぞれの生活や夢に、選択を余儀なくされる。
選ばなかったことを何かしていたら、今は変わっていたのだろうか。
それは違う。と再会して思う。ナヨンとヘソンには結ばれるべき『イニョン(縁)』がなかったのだと。人生から消えた少女を見つけたというヘソンとノラ、思いが交差する無言の時間が痛かった。
ヘソンは橋のもとで再会し橋を渡って終わる時、やっと子供の頃の思いに決着がついたのかも知れない。
サヨナラで始まり、また会おうで終わる物語
【文・瑞野明青】
■映画『パスト ライブス/再会』をみて(深水英一郎)
渡りたい橋を渡らぬ選択は来世でもなおくつがえせない
/深水英一郎 (映画『パスト ライブス/再会』をみて)
離れた場所をつなぐ橋のように人々の生きる環境の間に橋がかかっているとするなら。それらの橋は複雑に絡み合っているに違いない。渡ってはいけない橋もあるだろう。それを渡るかどうかはその人の判断である。結局、どの橋をわたるのがよかったのか。たどりついた場所が本当の目的地だったのか。それに正解はない。
今が幸福だったらなおさら。
なにが正解だったかなどわからなくなってしまう。
大人の恋愛とは好きなひとが幸せになることを願いつづけることだということはみんな知っていて、多くの人たちはそうしているのだろう。
そこに橋が見えていたとしても渡らないのが、大人なのだ。
この映画のファンタジーはかつて12歳のころ少女ノラのことが好きだった少年ヘソンが36歳になってようやくその橋を渡ってきてしまうということ。ノラは海外へ移住してしまって24年間会っていない。
考えてみれば、怖いぐらいのひきずり具合と衝動だ。
この間に、ノラは他の男性と結婚している。そこへ、初恋をひきずった男が、海を渡って訪ねてくる。波乱の予感しかしないが、一体どうなってしまうのか。彼の感じる恋は果たして運命なのか。
【文・深水英一郎】
■映画公開情報
映画『パスト ライブス/再会』2024年4月5日(金)より、全国公開。(原題『PAST LIVES』)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives
公式Twitter:@pastlives_jp
監督/脚本:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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公開日・公開情報
2024年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
わたしも映画で短歌を詠んでみたい、というかたは、「映画短歌空間」にご参加ください