吐いた息が白い、そんな夜に、ラーメンを食べるためだけに電車に乗りました。ものぐさな人間なので、いくら時間に余裕ができたと言えど、普段なら絶対にそんなことしないのに。短歌をはじめて、浮かれているのかもしれません。わたし!短歌で!浮かれているのかもしれません!
千駄ヶ谷 夜空に白く薫る湯気 人が賑わうホープの暖簾
ねぎ多め、恥ずかしいより美味しいを共有できるあなたと2人
千駄ヶ谷、もしくは代々木駅。落ち着いた町を少し歩くと、夜道を案内する濃厚な豚骨醤油の香り。国立競技場の向かいに光る黄色い看板。若者やサラリーマン、トラックやタクシーの運ちゃんがいれかわりたちかわり訪れる、昭和35年創業のホープ軒と言うラーメン屋さんです。
食券を買い、店前に立つ店員さんへ好みを告げます。自分は口下手なので「普通でお願いします」と一言。狭い階段を登り、カウンター奥へ着席。セルフのお茶は、さわやかなジャスミン茶です。食前食後に清涼を、こってりしたラーメンとの相性が抜群なんです。スープの香りにお腹を鳴らすと、やってきました輝く一杯!
麺は中太でスープがよく絡みます。そのままでも美味しいのですが、カウンターに置いてある、ご自由にどうぞのかごに盛られた長ネギの小口切り。こちらをどっさり入れるのが最高なんです。にんにくや豆板醤もお好みでどうぞ、脳みそ直撃、虜になるお味でございます。背脂の層がしっかりと膜を張り、寒い夜でも、スープは熱いまま。
口づけて汗ばむからだ火照る頬 熱冷めやらぬ豚骨醤油
背脂で熱と旨味をラッピング懐かしいけど刺激的な味
時間も匂いもカロリーも、気にする事なくもりもり食べて。苦しくなったおなかを抱え、ゆっくりと夜道を歩く。とてもいい気分です。興味のない星なんか見上げちゃってね。
思い出したかった大切なものを、ここ千駄ヶ谷でひとつ見つけました。元社畜、風情レベルアップです。
食べ過ぎた でもいいじゃないこんな夜は星も笑顔も輝いてるし
【短歌とエッセイ・dada】