2024年6月30日(日)に放送された 超短歌ラジオ。
今回は鳥さんの瞼さんと版元である点滅社の屋良さんをゲストに迎え、『死のやわらかい』スペシャルということでおおくりしました。
たくさんのお便りと、投稿、ありがとうございました。
【まだラジオ聴いてないよ!というかたはぜひこちらから音声もあわせてお楽しみください】
■テーマ「架空の同居人について短歌を詠む」
募集テーマは決まったものの、少しお題が難しいかも?ということで急遽 鳥さんの瞼さんにこのテーマで3首、作例として詠んでいただきました。
鳥さんの瞼さん、ありがとうございました。
作例を公開したからでしょうか。投稿は難しいお題にもかかわらず活気づいて、最終的には90首の投稿をいただきました。リスナーのみなさん、ありがとうございました。
■リスナーのみなさんからの投稿
助けてと泣いたらそばにいてくれる?かなえてくれる?四次元ポケット (山川 然)
違うので得意な家事がお互いにふたりの暮らしは適材適所 (山川 然)
よく見ると両目が硝子玉だった気づいたものの愛したあとだ (山下ワードレス)
あなたとの14分の同棲を終えて、真夏の大観覧車 (山下ワードレス)
幽霊とながく連れ添う老人の徐々に衰えはじめた霊感 (山下ワードレス)
そうめんの記事書いてるのが本垢で私が架空の同居人です (とんだ一杯食わせ者)
マンションの契約の時は脳内に好きな相手と子供が2人 (とんだ一杯食わせ者)
ぬいぐるみどこの手先か知らんけどおっさんハダけ煙草喫(の)んどる (良井ハウラ)
心までマナーモードにせんでくれプリンの罪はもう許すから (良井ハウラ)
「ただいま」がいまだないから掃除しよ見た部屋のすみ爆睡してた (良井ハウラ)
帰宅した記憶すらない翌朝に玄関の靴みがかれている (笛地静恵)
屋根裏に散歩者いますいたずらに部屋の電気をつけては消して (笛地静恵)
触れてない風も吹いていないけど室内にあるハンガー落ちた (ツキミサキ)
あなたには聞いてないけどストラップ揺らしてYES!と会話に入る (ツキミサキ)
アダプター気付けばひとつ移動してふんわりささる力尽きたな (ツキミサキ)
真夜中に猫とあなたが駆け回りセンサーライトが順位を決める (梅雨すみれ)
微妙とかどっちでもと言い出したここ最近のわたしの主審 (畳川鷺々)
はじめての彼女ができて息絶えるはじめてのぼくの部屋の精霊 (畳川鷺々)
天才は三角コーナーにて死んだどんな醜い火になるだろう (畳川鷺々)
ついさっき殺した奴は親友のドッペルゲンガー51号 (10)
七色の光るウンチを掃除する抜け毛も多い別れようかな (豆腐クラブ)
炭酸のコップにみみを押しこんでようせい達のほめことば聞く (たけま)
さてはまた歌ったでしょうリビングに無数の花がこぼれています (あひる隊長)
使わないドレッシングがまたひとつドアポケットに増えてゆく 夏 (三角)
何ひとつ聞かれなかった食卓の麻婆豆腐は泣ける辛さで (睡密堂(すいみつどう))
「ゆで」と書きおいたタマゴがきみの手でサンドイッチにメタモルフォーゼ (睡密堂(すいみつどう))
思い切り針をとがらせている君ワンウェイラブの水を注ごう (睡密堂(すいみつどう))
『スワン』では一羽の白鳥、『夕鶴』では鶴が始めるこの世の暮らし (祥)
いつだって鏡の向こうに姉がいて 港に近い坂を降りて行く (祥)
物音と影しかみせぬ同居人男心を知るチラリズム (Si)
週末は滝に打たれに行く人へウィークデイの穢れを託す (宇祖田都子)
おやすみと寝返り打てばどこからかおかえりなさいとこだまする (古井 朔)
いつのまに扇風機が首を振りわたし以外を冷やしはじめて (古井 朔)
罪なくば誰も閉じ込めたりはせぬ もう戻れない|垂直落下| (古井 朔)
浴槽のへりに腰かけ神妙に泳ぐ鯖から啓示をいただく (さばさはる)
家族への一歩目として花束の代わりにネギを買っていきます (外村ぽこ)
シェアハウス 国も言語も髪の毛も冷やし中華の色鮮やかさ (奥 かすみ)
手の多い生き物と今暮らしてて爪切りをまた百均で買う (新妻ネトラ)
新しい命くらいはあるだろうゴミの森にもシンク下にも (新妻ネトラ)
壁越しに殺めるような熱視線そうかあなたは塩が嫌いか (すだち蕎麦)
虚勢張り帰宅後倒れるわたくしを布団に縛り付けてく小人 (虚見津山都(そらみつやまと))
偶然を装い歌で慰める姿形は見えないくせに (なんちてかやこ)
今日行くよ今から会える?とやって来て夜更けに帰るエセ同居人 (なんちてかやこ)
しわしわの洗濯物もきみがいる証でそのまま着させてほしい (菜々瀬ふく)
カーテンの裾が踊ってゐるミケよまた友達を連れてきたのかい (菜々瀬ふく)
顔はなく健康だけが自慢の子 待機要因ときどき代わる (水の眠り)
すべからく世の中のことを知っている聞きたい音だけ奏でる風鈴 (水の眠り)
人っぽい壁のシミに話しかけてたらだんだん顔が出来てきており (叭居)
バイキンと嫌われたって君がいるドキンとすれば幸せなボク (藤本くま)
君の姿見えぬ時には窓開けて空を探した風の強い日 (藤瀬こうたろー)
お互いの堕獄の歩み知っていておまけに傷の場所も知ってる (古城えつ)
どうかしら俺のおばけは影も無く実体も無くだけど見てるよ (傘糊)
味噌汁のかおりの中でロールパン流し込む朝きょうもこんなか (大山歌胡)
帰りみち女子力とやら買ってきた。じゃがいも、にんじん、しらたき、ぶたにく? (大山歌胡)
やっぱりね恋愛映画好きだけどエンドロールは見ないタイプね (大山歌胡)
無洗米しっかり研いで炊いたやつ あれと豆腐の味噌汁がいい (ユミヨシアユム)
洗剤を戦力として見極める うちの風呂場と勝負する君 (ユミヨシアユム)
泥酔後ふとんで寝てるありがとう記憶と財布だけが無いけど (一筆居士)
耳鳴りが少し嬉しい目を閉じて待てば触れられるから束の間 (インアン)
レンタルビデオにポップコーンのロマンスあと恋人だけいたらなぁ (浅葱 体温)
丁寧な暮らしを好む同居人 食器の襞がまた増えている (市川)
世迷いごと口衝くたびに珈琲を淹れてうなづき黙らせるひと (一福千遥)
のこり陽のとどまる部屋でふたりきり背中合わせに知るサウダージ (一福千遥)
おたがいの身の上話を語り終え交わした笑みとひろがる余白 (一福千遥)
「学校は」「クソ」「労働も」「クソ」(握手) 娘と交わす朝のルーチン (ケムニマキコ)
毎晩のようにウォーリーさがしてた いなくならないでって言ってた (ケムニマキコ)
雨の日は誰も死なない映画がいいプリングルスでアヒルになって (ケムニマキコ)
そうやって濡らすタイプの幽霊が和室にいると、ごめんめいわく (金森人浩)
一滴の返信として幽霊がシンクに垂らす音の広がり (金森人浩)
キッチンは死と親しくて死を切って温めて食う、死が側にいる (金森人浩)
うずくまるぼくの涙をしつとりと舌で舐めとるきみのやさしさ (碧乃そら)
透明なオコジョの群れをかくまっているから片付けられないこたつ (onwanainu)
私だけ空が見えてたメルトルプあなたの夏を置いてくつばめ (onwanainu)
つくられた暗闇でうまくすくえない君のおやすみが逃げた水槽 (onwanainu)
肉体はマンションなので通り過ぎゆく人たちと未来を仰ぐ (混沌バグ)
虎落笛みたいに君は泣いているボクの心を少しちぎって (混沌バグ)
そうですかプライバシーはないですかボクだけ見える人の性別 (混沌バグ)
難題を難なく解決する君とずっと仲良く過ごしたい (呂尚)
兵法を駆使して大国薙ぎ倒す君は民衆のヒーローさ (呂尚)
最近は虫の夢をよく見るらしい かふかかふか、と咳をしている (みながわ)
君はまたカップをひとつ置き忘れ僕に洗わせ気づきもしない (吟良(あきら))
「ただいま」も「行ってきます」も受け止めて わが家の空気さんは人肌 (納戸青)
さみしさに色はないからまどぎわの空気人形きれいにひかる (納戸青)
水道を出しっ放しにまたしてるアイツのせいや一人だけの夜 (白孤)
アトムくん変電室にはいってね百ボルトくれWi-Fiとばそ (白孤)
浴槽で鯨を飼っていますので今日もお風呂はキャンセルします (あきの つき)
泣き濡れた頬を優しく雑巾で拭ってくれる小さなあなた (あきの つき)
引っ越しを する時いつも 「お、結婚?」聞かれるたびに 嘘を並べて (あだむ)
お揃いの 箸を並べて 肉じゃがを食べるあなたが 今でも見える (あだむ)
スマホから 流れる推しの 声聞いて目覚める朝は どこか寂しい (あだむ)
投稿は以上です。みなさん、投稿ありがとうございました!