話題の歌集・歌書をピックアップし、ネットのみなさんに著者コメントをお届けするコーナーです。今回は、第二歌集『沼の夢』を上梓された 歌人工藤吉生さんにコメントをいただきました。
■第二歌集『沼の夢』について
第一歌集は短歌研究社さん、第二歌集は左右社さんということで、出版社が変わると作り方も変わります。今回は編集者の筒井さんから意見をたくさんいただきまして、こちらからも意見をぶつけました。それでも決まらないものについてはそれ以外の方に相談することもありましたが、とにかくワイワイやりながら作ったような印象です。
第一歌集では新人賞や結社賞の受賞作など既成の連作をおおむねそのまま収録していましたが、今回はほとんどバラバラにしてから新しく組み直してベストの状態を目指しました。手直しした歌も多いです。一首単位では既発表作が多いのですが、連作のまとまりとして見ると新しくなっています。
カバー付き、二首組であることも第一歌集との違いです。
家族、仕事、夢、過去、生活などをテーマにしています。
スケザネさんからいただいた推薦文もいいんですよ。
《この歌集には、奇跡の時間が乱暴に折り畳まれている。ゲキツウ。》
――渡辺祐真/スケザネ(書評家)
■歌集『沼の夢』より自選8首
捨て場所を探して歩くビニールのゴミを握ればオレの温度だ ウインカーつけて曲がってゆく車 しずかな夜を眠れずにいる 子供にはちょうど良さげな枝だなあ 構えてもよしつついてもグー あたたかくなってくるのはありがたい母がなにかをゴシゴシしてる 工藤にも生きる権利があるという噓みたいだがほんとの話 カーテンに隙間があって景色には足りず表情にはまだ遠い 引き抜いた白髪まとめて捨てるとき羽根を捨ててるみたいだったな スーツ着たままデタラメに歩いたらオレしかいない草原に雲 (歌集『沼の夢』より)
■短歌の出典について
出典については本当にさまざまですが、雑誌『短歌研究』に掲載された歌が比較的に多いです。いつか出典一覧を作りたいと思いますが、前述の通りバラバラに組み替えたのでカオスな出典一覧になることでしょう。結社、投稿の作品も含まれます。
■書籍の装丁・デザインについて
デザインは、表紙が新山祐介さんという方の絵です。数人の方の絵を見て表紙を選ぶのが楽しかったです。最終的にこの表紙の絵がもっとも気に入りました。装丁は鈴木成一デザイン室です。文字のフォントや帯にもご注目いただければと思います。
ネットで見れる商品画像だけではわからない仕掛けのような部分があるので、ぜひ皆様に手にとってほしいです。
■歌人プロフィール
工藤吉生(くどう よしお) @mk7911
1979年11月4日 千葉県生まれ。
2011年に枡野浩一編『ドラえもん短歌』(小学館)で短歌に興味を持ち、インターネット中心に短歌を発表し始める。
2018年に第61回短歌研究新人賞を受賞。
2020年 歌集『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)
■書籍情報
書名:『沼の夢』(ぬまのゆめ)
著者:工藤吉生(くどうよしお)
歌集ナンバリング:第2歌集
短歌収録数:322首
税込価格:1,980円
発行元(版元・出版社):左右社
発行日:2024年1月31日(Amazonからの発売は2月6日)
総ページ数:184ページ
本書販売サイトの代表的なLINK: Amazon
組版・装丁:鈴木成一デザイン室
装画:新山祐介