話題の歌集・歌書をピックアップし、ネットのみなさんに著者コメントをお届けするコーナーです。今回は、第一歌集『遠い感』を出版した歌人郡司和斗さんにコメントをいただきました。
歌集『遠い感』より自選六首
猫に間合いをはかられているときずっと視界の隅にある月の暈 レジにぶちギレる人の力はどこから来る…… ポケモン柄の炬燵を出して 川べりの夜の桜の散るちから、ちからのはなびらを浴びている はじけりゃYea 牡蠣好きで牡蠣アレルギー 素直にGood 明け方に眠った 祈りすぎてもだめなんだけどでも祈る 音立てながら西瓜を齧る 後方腕組み彼氏面とは 午後からは止んでいたのにまた降りだした (郡司和斗『遠い感』より)
読者のみなさんへ:著者コメント
― 第一歌集おめでとうございます。今回の歌集で挑戦した点があれば教えてください。
一度、同時代的なものをあえてできるだけ取り込んで、それを無化した上で自分の道を示すという、けっこう意地悪で遠回りなことをやったつもりではあるんですが、なかなか難しいです。自分で歌集をまとめてみて、さらに同時期に出た他の第一歌集たちと並べて読むと、それぞれ技法やモチーフ、語彙が本当に似通っていて(文語とか口語とかそんなん関係ないレベルで)、あらためて歌集における新しさとは何なのか、自作にも他作にもわからなくなってきました(と言いつつ本当にわかっていないつもりはないですが)。
― 特に印象に残っている一首をおしえてください
表題歌は印象に残っています。
遠い感 食後にあけたお手拭きをきらきらきらきら指に巻いてる
昔、盛岡に遊びに行ったとき、浅野大輝さん、絹川柊佳さんと「ハンバーグのベル」でご飯を食べながら急遽即詠歌会をすることになりました。そのとき2分くらいで表題歌が作れたように覚えています。
― 短歌以外の他ジャンルから受けた影響があるでしょうか
オールジャンルから影響受けまくりだけど、マンガ・アニメは特に好きです。
― タイトルはすぐ決まったのでしょうか
実は初校から校了までにタイトルが四回くらい変わっています。結局は「遠い感~」の歌からフィーリングで採りました。
― 掲載歌の初出は
短歌研究誌を中心に、各同人誌、角川短歌、江古田文学、うた新聞などから。
― 表紙絵や装丁について
表紙は現代美術家のKOURYOUさんに丸投げですが、ごちゃごちゃしてる感じが自分の心にフィットするなーと思っています。表紙のツヤツヤした加工も好きです。
― 今後のご自身の目指す方向についてお考えはございますか
遠くを目指して。
― 歌集を通して感じ取って欲しいことなどあれば教えてください
遠い感じ。
― この歌集をひとことで言えば
遠い感じ。
― ありがとうございました!
■書籍情報
書名:『遠い感』
著者:郡司和斗
第一歌集
発売日:2023年9月26日
価格:2200円(税込)
栞文:穂村弘・川野里子・瀬口真司
版元:短歌研究社
判型・頁数:四六判ソフトカバー/144頁
カバー装画:KOURYOU
タイトルデザイン:木内陽
装丁:加藤愛子(オフィスキントン)
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■著者プロフィール
郡司和斗(ぐんじかずと) @gun_ji_wowowo
1998年 茨城県生まれ
2017年 二松學舍大学松風短詩会結成
2018年 歌林の会入会
2019年 第39回かりん賞受賞
2019年 第62回短歌研究新人賞受賞
2022年 2022年度口語詩句賞新人賞受賞
現在は大学院生。公益財団法人佐々木泰樹育英会奨学生